キーサイト・テクノロジーは、5月29日~31日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「ワイヤレスジャパン 2024×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2024」にて、基地局エミュレータ「UXMシリーズ」の最新モデルを活用したWi-Fi 7のアクセスポイント/クライアント開発を提案している。
UXMシリーズの最新モデルとなる「E7515W UXMワイヤレス・コネクティビティ・テスト・プラットフォーム」は2024年2月に発表された基地局エミュレータ。前世代のE7515Bでは、ソフトウェアアップデートでWi-Fi 6Eまでの対応だったが、E7515WではWi-Fi 7の要求性能に対応を図るため、ハードウェアを刷新。同社が2017年に買収したIXIA(イクシア)の「IxVeriWave」関連のテスト技術も内包するなど、多種多様な無線ネットワークに関するテストを行うことが可能となった。
大きな特徴の1つとしては、アクセスポイントとして利用することもステーション(クライアント機器)として利用することも可能という点。夏から秋にかけたソフトウェアアップデートでは、数百のクライアントが接続した状態をエミュレートすることができるようになる予定で、これによりそれぞれの条件の違うクライアントにおけるスループットの確認などが可能となるという。現在、家庭内でもスマートホームというトレンドを追い風に、1人に数台のスマートフォン(スマホ)に加え、家電もネットワークにつながるようになってきており、アクセスポイント(ルーター)に接続するクライアントの台数は意識しないでも数十台といった家庭も増えており、今後、その接続台数はさらに増えることが予想される。すでに30台を超すクライアントが接続してもスループットを保てるとうたったWi-Fi 6Eルーターなども登場しているが、今後、さらにWi-Fiで接続されるクライアント機器は増えるであろうことを考えれば、こうしたテストは必須になってくることが予想される。
また、Wi-Fi 7ではMulti-Link Operation(MLO)が採用されるようになり、クライアントとアクセスポイントは、異なる周波数帯域(2.4GHz/5GHz/6GHz)とチャンネルでデータを同時に送受信できるような複数リンクを確立させ、スループットの向上や通信信頼性の担保などを図ることができるようになる。また、複数のRUを1つのクライアントに割り当てる技術で、チャンネルリソースの最大化を図り、データ転送速度の向上を実現する技術であるMultiple-Resource Units(M-RU)や、チャンネル使用率の向上が可能となるPreamble Puncturingも採用される。
こうした新たな技術要件に対応するためには、さまざまなテスト機能が必要となる。同製品は、Wi-Fiステーションおよびアクセスポイントテスト両方のSignaling/Non-Signaling試験をサポートしているほか、4×4 MIMO/320MHz/4096QAMのエミュレートが可能で、Wi-Fiスタックのレイヤ1からレイヤ7までのテストカバレッジを提供できる。また、1つのボックスで4G/5GとWi-Fiの相互運用性もサポートしている。これにより、従来は2台の別々の機器を接続する必要があったセルラー-Wi-Fiの連携テストを1台で実行することが可能となる。そのため対応周波数レンジも380MHz~7.125GHzと幅広いものになっているという。
なお、同製品はすでに出荷を開始しており、同社では国内の活用例としてはアクセスポイントを配置して、ネットワークを構築するメーカーなどを想定しているとしている。2023年末に総務省が電波法施行規則の改正を行ったことで、Wi-Fi 7は国内でも利用が可能となったが、まだ対応している端末、アクセスポイントともに一部のメーカーに留まっている。今後、E7515Wのような製品を活用して開発が進められることで、対応機器が増えていくことが期待される。