ダイキン会長・井上礼之氏が退任 30年続けたトップを退く

雑種の野性味と帰属意識、チームワークを強みに…

 ダイキン工業を世界一の空調メーカーに押し上げた〝中興の祖〟が退任する―─。

 ダイキンは会長の井上礼之氏が取締役を退き、名誉会長となる人事を発表。6月の株主総会を経て、社長兼CEO(最高経営責任者)の十河政則氏は会長兼CEOに、専務執行役員の竹中直文氏が社長兼COO(最高執行責任者)に昇格する。

 1935年生まれの井上氏は89歳。94年の社長就任から現在まで、ちょうど30年間社長・会長のトップをつとめた。2006年には約2400億円でマレーシアの空調大手OYLインダストリーズを、12年には約3千億円で米グッドマン・グローバル社を買収したダイキンは、押しも押されもせぬ世界最大の空調メーカーになった。

 井上氏が社長に就任した94年の売上高は4千億円弱だったが、24年3月期は約4.4兆円。売上高営業利益率8.9%の高収益企業に成長した。

 退任の記者会見にも登場しなかった井上氏だが、「東大や京大を卒業したようなエリートはいなくても、愛社精神ある社員が多い。雑種の野性味と帰属意識、チームワークが当社の強み」(本誌2007年秋季特大号)というのが持論だった。

 問題はカリスマが去った後の経営。すでに海外売上比率7割超の同社だが、欧州では各国政府による補助金制度の削減に加え、ガス価格の下落によって各国でガスやオイルボイラーからの更新需要が停滞。中国でも経済減速の影響を懸念する声は高まる。

 そうした状況下、新社長に就く竹中氏は1964年大阪府生まれの60歳。「進化し続けるため、現場に入り込み、成果を創出したい」と語る竹中氏。同氏の手腕がこれから問われる。

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