中国政府が、米国を中心とした対中半導体輸出規制に対抗することを目的とした半導体の新たな国策ファンドを立ち上げたと中国および台湾の複数メディアが報じている。

このファンドの正式名称は、「国家集成電路産業投資基金三期股份有限公司」で、登録資本金は3440億元(約7兆3500億円)で登録されているという。筆頭株主は出資比率17%の中国財政部で、国家開発銀行の子会社の国開金融(出資比率10%)、上海市政府傘下の投資会社である上海国盛集団(同9%)はじめ、中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行など19の国有企業が株主に名を連ねており、5月24日に正式出資されたという。

投資先はまだ明らかにされていないが、中国の企業情報提供会社「全査査」によると、同ファンドは大規模半導体製造、半導体製造装置、半導体材料、半導体設計を含む中国半導体産業サプライチェーンの主要分野への投資をこれまで同様、継続して行っていくことが予想されており、AIチップやHBMなどの人工知能半導体分野の研究開発にも資金を注入する可能性があるほか、シリコンウェハや化学薬品、産業用ガスなどの材料や半導体製造装置の国産化を進めるメーカーの育成にも力を入れる模様である。

中国政府はハイテク産業の育成策「中国製造2025」を発表して、2014年には半導体の国策ファンド「国家集成電路産業投資基金」を立ち上げた。第1期(20214〜2018年)の投資額は約1400億元、2019年に始まった第2期(2019〜2023年)は約2000億元であり、今回の第3期はこれら過去2回の投資を上回る規模となっている。

第1期では、半導体製造分野に67%、設計分野に17%、パッケージングおよびテスト分野に10%、装置・材料分野に6%に投資が振り分けられたことが明らかになっているが、第3期では、半導体の国産化のための製造や装置・材料に重点投資されるのではないかとみられている。

なお、ファンドの代表者は半導体などの産業政策を担う工業情報化部出身で中国の半導体政策の立案にかかわってきた張新氏が務める。