Linux Foundation Japanは、2023年12月から本年2月にかけての調査結果「2024年技術系人材の現状に関する調査」から日本に関する調査内容をまとめた「2024年日本の技術系人材の現状レポート」を5月27日にWebサイトに公開した。
レガシーシステムの統合の複雑さが課題
調査はLinux Foundationとそのパートナーが、世界的な技術系人材の獲得と維持、管理の現状について知るためにITベンダーやサービスプロバイダー、非営利団体、学術機関、政府機関などを対象に2023年12月末から2024年2月初めにかけてWebで実施。内容は世界中で合計1,455人の回答者の内、有効な418名への42の質問がベースとなっており、日本に関しては活動拠点を日本と答えた80人を調査対象としている。
最新のIT環境については、レガシーなメインフレームが多く運用されており、平均で45%と半数弱を占め51%がクラウドを導入、レガシーシステム統合の複雑さや技術人材不足などの課題を抱えながらもモダナイゼーション(既存システムの刷新)への取り組みが進んでいる。59%の組織がなんらかの形でクラウドリソース導入を考えているが"レガシーシステムの統合の複雑さ"(52%)とスキルのある人材の不足(51%)が新技術導入の際の主な課題となっている。生成AIに関しても、日本では従業員数に多くの影響を与えており、「生成AIの影響で人員が削減された」が24%、「2024年、生成AIの影響で人員が増加する」が36%と生成AIによる影響がアジア太平洋地域、北米/ヨーロッパ地域より高い数値を示す。レポートではこの傾向を"AIの能力を導入することで新規採用労働力の効果を増幅させるという日本企業の戦略的アプローチ"と分析している。
今後予定するAIのユースケースに関しても、ITインフラの監視、ソフトウェア開発、システム保守の順で関心が高く日本以外で他の地域で高いデータ分析ついては低く日本独自の傾向がある。
スキルへの投資を強化する日本の企業
必要なスキルを持つ技術系人材採用の課題については、日本では組織の55%が「経験の浅いプロフェッショナルを雇用し、スキルアップさせる」と回答、「既存の技術スタッフのクロススキリング(本来の専門性以外の業務のスキル獲得)」においても51%と他の地域と比較して高い傾向があり日本では、新技術の経験を持つIT専門家を新たに採用するより、スキルトレーニングを重視して採用する傾向ある。
これらのスキルアップトレーニングを支える企業内研修プログラムについては、非常に効果的が31%、効果的が37%など合計で68%が自社の従業員研修が効果的であると回答するなど、そのシステムに高い信頼を持っており、加えて「今後12カ月間で、あなたの組織では、技術導入を支援するための研修プログラムへの投資を変更しますか?」で60%が投資を増やすと選択、今後も技術系人材の育成に力を入れていくことがわかる。
IT技術者の人材不足は世界的な問題であり、日本においても将来の技術者不足は、経済産業省が2018年にIT分野の人材不足が約22万人、2030年には79万人にまで悪化する可能性があると報告されている。レポートはこの問題に対するケーススタディとして日本にフォーカスし、対策として、企業DXとクラウド技術の導入、生成AI、人材育成のための研修インフラの強化などを推進する日本の現状についてスポットライトをあて分析、英語版・日本語版を同時公開で報告している。