米国政府は、韓国SKグループ傘下の化学メーカーSKCの米国子会社AbsolicsにCHIPS and Science法(CHIPS法)に基づいて最大7500万ドルの補助金を支給することを決定したと発表した。
対象は、同社が米ジョージア州コビントンに半導体先端パッケージング用ガラス基板技術の開発・製造を行うことを目的として建設する12万平方フィートの施設。これまでCHIPS法に基づく補助金は半導体デバイスメーカーを対象としており、先端半導体材料向けは今回が初めてとなる。
Absolicsは、2021年にSKCが米国に設立した半導体材料メーカーで、2022年末に後工程製造装置への進出を狙うApplied Materials(AMAT)が4000万ドルを出資する形でSKCとのジョイントベンチャーとなっている。
今回の補助金は、工場建設の総投資額約3億ドルの1/4にあたり、この投資により1000人以上の建設職と約200人の製造および研究開発職が創出されるほか、ジョージア工科大学のイノベーション能力を高めることに加え、ジョージア・ピードモント・テクニカル・カレッジと提携して、即戦力人材の教育や実践的なスキルトレーニングを提供するなどの地元の半導体人材パイプラインを支援することが期待されている。ジョージア工科大の3Dパッケージング研究センターとのコラボレーションを通じて開始されたAbsolicsのプロジェクトは、米国の研究室から製造工場への生産移管の好例になるだろうと米商務省はみているほか、Absolicsは米国防総省のRF技術における「最先端ヘテロジニアス統合パッケージ(SHIP)」プログラム関連プロジェクトにも協力する計画だとしている。
Absolicsのガラス基板は、消費電力とシステムの複雑さを軽減し、AI、HPC、データセンター向け先端半導体の性能を向上させる先進パッケージング技術として活用される。ガラスを用いることで、小型かつ高密度、より短い接続が可能になり、より高速でエネルギー効率の高いコンピューティングが可能になるという。現在、先端パッケージング基板の工場はアジアに集中しているが、今回の投資により、米国を拠点とする企業は先端パッケージング用ガラス基板の米国内供給を拡大することができるようになると商務省は期待している。
今回の補助金支給決定について、米国半導体工業会(SIA)は、半導体製造のみならずエコシステム全体の重要プロジェクトに資金が振り向けられたことを支持する声明を出しており、今後も製造装置メーカーや材料メーカーへの補助金支給に向けた期待を表している。
なお、 Absolicsは、ガラス基板の普及を見越して、近い将来、今回取り組む第1工場よりはるかに大きな第2工場の建設も計画している模様である。