神戸大学、ファーストパーソン、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は5月27日、メタバース技術を活用して、細胞培養の作業手順を学ぶデジタルツイン環境を共同開発したことを発表した。神戸大学が提供する社会人向けのリスキリング講座に導入し、細胞培養に関わる研究者の育成を図り、創薬や再生医療などの分野における研究開発の高度化に貢献する。
共同開発の概要
今回3者は、次世代バイオ医薬品の製造技術基盤開発の一環で、神戸大学に設置されたGMP(薬品の製造業者および製造販売業者に求められる適正製造規範)に準拠した細胞培養の実験施設をデジタルツイン環境上に再現した。
医薬品の初期の製造プロセスである培養工程の一部を、実際の実験室での作業をメタバース上で模倣することで、作業を繰り返し試すことができ、習熟度を上げ品質の維持につなげるという。
同施設は、レーザースキャナーで360度撮影した実際の実験施設のデータを取り込んで、実物と同様の実験室をデジタルツイン環境上に構築されたもので、2Dの画像と図面から培養装置の3Dデータを生成して、装置の見た目や奥行きを再現して実験室内に配置されている。
細胞を培養する作業をメタバース上で体験して、間違った作業手順や培養品質に影響のある操作を行った場合には、正しい操作の説明を確認することができる。
共同開発の役割
なお共同開発では、ファーストパーソンのプロジェクト管理のもと、神戸大学が培養工程と装置の作業手順を監修、CTCはOmniverseライセンスの提供、実験施設の3D空間の構築と3Dデータの生成、デジタルツインの環境への取り込み、作業工程のシナリオ化やアニメーションの制作を担った。
今後も3者は、デジタルツイン技術について製造プロセスにおける他の工程での活用も検討し、創薬や再生医療などの研究開発の高度化に貢献していきたい考え。