市場調査会社の富士経済が、パワー半導体向けウェハ市場を調査した結果をまとめた調査レポート「パワーデバイス向けウェハ市場の最新動向・技術トレンド」を発刊した。
それによると、2024年のパワー半導体市場は前年比23.4%増の2813億円と見込まれるという。シリコンパワー半導体が在庫調整の影響からシリコンパワーウェハ市場は前年を下回る一方、SiCベアウェハは主要メーカーが生産能力を増強したことなどから同56.9%増と伸び、シリコンウェハ市場を上回ることが予想されるとしている。
また、2025年以降については、パワー半導体の需要が増加していくことに併せる形で市場が拡大していくと予想している。特に自動車の電動化による需要増加からSiCベアウェハが長期的な市場けん引役となることに加え、シリコンウェハも生産調整の影響から脱するとみられる。さらにGaNウェハの大口径化が進むことや、酸化ガリウムウェハの量産開始といった上乗せも期待でき、2035年の市場規模は2023年比4.7倍の1兆763億円へと拡大することが予測されるとしている。
パワー半導体市場としては、まだ市場として顕在化していないものの、次世代技術としてダイヤモンドウェハ、窒化アルミニウムウェハ、二酸化ゲルマニウムウェハなどの開発も進められており、それらの実用化も期待される。
大口径化が進むパワー半導体ウェハ
近年、パワー半導体の需要の増加に伴う供給量の確保に向けてウェハの大口径化が進んでいる。
シリコンウェハの300mm化に加え、SiCベアウェハも2025年以降に8インチ(200mm)ウェハの市場が本格的に立ち上がることが期待されている。また、GaNウェハや酸化ガリウムウェハも、パワー半導体での活用に向けた6インチ(150mm)化の開発が進められている。
とはいえ現状はシリコンパワー半導体の多くが8インチウェハから供給されており、今後も6割以上(枚数ベース)を8インチが占めるとみられる。300mmウェハはIGBTやMOSFETでの採用が進んでおり、自動車・電装分野の需要増加に伴って採用がさらに増えるとみられ、将来的には特定のデバイスを除き8インチと300mmの住み分けが進むことが予想されるとしている。
また、現状のSiCベアウェハは6インチが大半を占めており、今後しばらくはこの状況が続くとみられるが、すでに一部でサンプル出荷が進められている8インチウェハも2025年以降市場が形成されていく見込みで、2035年にはSiCベアウェハ全体の13.3%(枚数ベース)を占めるまで成長すると予測される一方、旧来の4インチは中国など一部地域での展開に留まり、今後は市場規模の縮小が予想されるとしている。