トヨタが日本初の営業利益5兆円超 今期は減益で足場固めの年に

HVが売れるほど利益が出る

「商品を軸とした経営と、積み上げてきた事業基盤が実を結んだ」─。トヨタ自動車社長の佐藤恒治氏は2024年3月期の連結営業利益が日本企業で初めて5兆円を超えたことについて、このように振り返る。

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 6850億円の円安基調による為替効果があったものの、北米や欧州を中心にハイブリッド車(HV)の販売が好調だったことが大きい。この1年間でHVを含めた電動車の販売台数は約100万台増加。そのうち「90万台はHVで、北米で最も多く売れ、日本、中国と続く」(副社長の宮崎洋一氏)状況だ。円安による資材高騰なども跳ね返した格好となっている。

 脱炭素に絡む各国政府による補助金支給などで電気自動車(EV)の潮流が色濃く出て、「アーリーアダプター」と呼ばれる初期採用者層を中心にEV販売が伸びたが、不十分な充電インフラによる電欠を危惧する声や航続距離、車両価格など様々な課題が噴出。フタを開けてみれば、HVに魅力を感じる消費者が多いことを物語る。

 しかも、トヨタの場合は1997年の初代「プリウス」から四半世紀が経過し、HVのコストは「ICE(内燃機関)と同等かそれ以下になっている」(同)。同社によると、2022年に発売した第5世代プリウスの製造原価は初代と比べて6分の1に下がっている。HVが売れるほど利益が出る構造だ。

 電動化戦略について佐藤氏は「多様な選択肢を提供していくというマルチパスウェイ戦略に変更はない」と改めて強調。26年のEV販売目標にはプラグインハイブリッド車(PHV)を含めて150万台を1つの目安にしている。

 一方で25年3月期の営業利益は前期比20%減の4兆3000億円を見込む。グループ会社の不正を受けて足場固めに注力するためだ。部品メーカーに対して労務費の上昇分を負担するなど、仕入れ先や販売店を含めて人的資本への投資で3800億円、EVやソフトウエア、人工知能など成長領域への投資に1.7兆円を投じる。

 足元の好業績に踊らず、将来に備えた体制づくりに目を向ける佐藤氏の手腕が問われる。