Infineon Technologiesは5月21日(独時間)、オンライン形式で“Artificial Intelligence at the Edge - how Infineon's technologies and models enableand provide AI in key applications”と題したメディアブリーフィングを開催。この中で同社のPSOC Edgeを利用してのAI戦略の詳細説明を行ったので、その内容をご紹介したい。
InfineonのMCU戦略については今年3月にレポートとして紹介しているが、今回の内容はこれをもう少しAIに特化した形でBreakdownした形になる。
半導体会社の例に漏れず同社もAIをビジネスの中核に据えており(Photo01)、現在はこうしたものについてどうソリューションを整えてゆくかというのが課題となっている(Photo02)。
ちなみに同社はあくまでEdge AIあるいはEndpoint AIと呼ばれる分野に特化した形になる。Edgeにすることでレスポンスを改善し、エネルギー効率を高め、コストも下げられる。要するにCloudと通信するのはTrainingのフェーズのみで、Inferenceはオフラインの形で動作するようなものが同社のターゲットとなる。ただ同社は、別に自社でAI搭載アプリケーションを開発して販売するわけではなく、顧客がAI搭載アプリケーションを構築するのを助けるという立場にある。そして、そのAI搭載アプリケーションの開発が(特にAIの部分が)まだ難易度が高い、というのが課題だとする(Photo04)。
その課題に対するInfineonのソリューションがこちら。ここで割と大きな面積を占めているimagimobは、昨年6月にInfineonが買収した組み込み向けMLソリューションの提供する開発プラットフォームであり、Ready Modelsと呼ばれる様々なEdge AIに役に立つモデルを提供し、これを利用して迅速にアプリケーション構築が可能、というものである。
このImagimobの提供するImagimob Studioという開発環境は、元々Imagimobが独立した会社だった事もあり、別にInfineonのMCUで無いと動かない、ということもない(Photo06)。
またReady Modelを使うだけでなく、独自のModelを構築する場合もこのImagimob Studio経由で利用する事が出来る。
さて、ここまではブリーフィング前半にあたる、一般的な話でここからがもう少しPSOC Edgeに特化した話となる。
PSOC Edgeは以前のロードマップにもあったように、Cortex-M55にHelium DSP、それとEthos NPUを組み合わせた構成で、IoTやConsumerからIndustrialまで幅広いターゲットを狙った製品である(Photo07)。
特にハイエンドとなるPSOC Edge E84の場合、High Performance CPU SystemにはCortex-M55+FPU+Helium DSPとEthos-U55と5MBものSRAM、Low Power CPU SystemにはCortex-M33+1MB SRAM、さらに2.5D GPUや豊富な周辺回路、そして外部メモリまでサポートする。
Infineonとしては、Audio&Sound、それとMachine Vision/Computer Visionのマーケットが今後大幅に伸びてゆくと想定しており、そこにこのPSOC Edgeを投入する考えである(Photo09)。
具体的なPSOC Edgeの役割分担がこちら(Photo10)で、単にAI処理だけでなく、もっと面倒な処理(例えばAudioでのBeamformingとか)も含まれる形になっている。
エントリ向けはE81で、より高度な処理はE83/E84を充てる予定とされる。実際に同社が想定するアプリケーション例がこちら(Photo11)で、こうした用途にPSOC Edgeを積極的に導入してゆきたいという話である。
実際に、物体認識を行うシステムを開発した場合で行けば、従来のシステム比で大幅な省電力/高速化と低コスト化が図れる、とする(Photo12)。
今回はまだPSOC Edgeの発売時期などは明らかにされていないが、すでにImagimob Studioや同社が従来から提供してきたModus Toolboxがあり、これを使ってプロトタイプを構築すると、そこからPSOC Edgeへの移行は容易そうだ。とりあえずPSOC EdgeとImagimob/Modus ToolboxでEdge AI/Endpoint AIマーケットを攻める、という方針が改めてブリーフィングの中で示されたのが、今回最大のニュースと言えよう。