Sansanは5月21日、同社が提供するインボイス管理サービス「Bill One」の提供領域を拡大し、企業の入金消込業務や経費精算などを支援するサービスを開始すると発表した。

Bill Oneは、郵送やメール添付などあらゆる形式の請求書をオンラインで受け取りを可能にし、正確なデータ化を通じて請求書業務のDXを促進するサービス。2020年5月のサービス提供開始から4年弱でARR(年間経常収益)68億円を突破し、クラウド請求書受領サービスで2年連続マーケットシェア1位を獲得している。

これまでBill Oneは、請求書受領の課題を解決する機能を中心に展開。そして今回、プロダクトのさらなる強化に向け、請求書発行・経費精算の領域にも拡大することを決定した。同日の記者会見に登壇した寺田親弘社長は「各領域におけるアナログな業務を効率化し、月次決算のリアルタイム化を目指す」と述べた。

  • Sansan 代表取締役社長 CEO 寺田親弘氏

    Sansan 代表取締役社長 CEO 寺田親弘氏

バーチャル口座で入金消込業務を自動化

請求書の発行業務だけでなく、新たに、発行後の入金消込業務を支援するサービスを手掛ける。請求書をオンラインで一括発行できる従来の機能に加え、入金消込業務を自動化、さらに仕訳データが自動作成できる機能を追加した。

住信SBIネット銀行と連携し、Sansanが銀行代理業者として取引を媒体するサービス「Bill One Bank」を開始。ユーザーは入金専用のバーチャルな講座を発行することで消込業務を自動化できるという。ユニークなバーチャル口座を取引ごとに付与できるため、Bill One上で請求書を作成する際、口座情報は自動で反映される。

  • 「Bill One Bank」の機能概要

    「Bill One Bank」の機能概要

また、発行業務に関してもメールや郵送などあらゆる形式の送付に対応。請求情報と入金情報も自動でひも付けされ、金額が合っているかが表示される。寺田氏は「請求情報と入金情報が分断されているために、煩雑な業務が発生している」と、多くの企業の経理担当が抱えている課題を説明した。

なお、入金消込機能は2024年8月頃から提供を開始する予定。

寺田社長「これまでにない経費精算を」

寺田氏は続けて「これまでにない経費精算を実現するサービスを提供する」と意気込みを見せた。同社が着目したのは、従業員による「立替払い」。この立替払いそのものをなくし、経費精算にまつわる処理をオンラインで完結できるようにし、法人カードで経費を支払う際に発生する明細突合や証憑提出の督促を自動化する。

同社の調査によると、立替経費精算は1社あたり月平均1500件発生しているという。また立替経費精算の多くが月末月初に集中し、経理が請求書の処理に追われてほかの月次決算業務に手が回らなくなるケースも少なくない。

またインボイス制度の要件を満たすかの確認にも手間がかかり、立替経費精算は経理への負担を大きくしている。従業員による経費の不正利用も見逃せない。Sansanの調査によれば、従業員の3人に1人以上が「経費の不正利用の噂を見聞きしたことがある」と回答した。

  • 3人に1人以上が「経費の不正利用の噂を見聞きしたことがある」 出典:Sansan

    3人に1人以上が「経費の不正利用の噂を見聞きしたことがある」 出典:Sansan

同社が提供するのは、法人カード「Bill Oneビジネスカード」を利用した経費の支払い。2023年6月に提供を開始したBill Oneビジネスカードは、バーチャルカードとリアルカードの2種類が用意されており、Bill Oneを契約しているユーザーは、カードの発行手数料、利用手数料なしで利用することが可能。

  • 法人カード「Bill Oneビジネスカード」

    法人カード「Bill Oneビジネスカード」

カードの利用明細と証憑の自動照合が可能で、Bill Oneにアップロードされた証憑は翌営業日中にデータ化する。利用明細の金額と合致しない場合はアラートが表示されるため、これまで経理担当者が目視で行っていた照合作業が効率化される。立替精算しか対応できない場合は、Bill One上で入力も可能。

  • Bill Oneを活用した経費精算

    Bill Oneを活用した経費精算

全従業員が経費の支払いにBill Oneビジネスカードを利用することで、立替経費精算そのものを削減することにもつながる。同機能の提供は2024年6月頃を予定している。

「企業全体の経費精算を効率化し、従業員による不正利用のリスクの低減にもつながる。立替経費をなくし、月次決算をさらに加速させていく」(寺田氏)