日本郵政グループの業績低迷が深刻化する中、自民党内で全国2万4000局の郵便局網の維持を目的に郵政民営化法の抜本的な改正案が浮上している。
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慢性的な赤字体質が続く日本郵便を親会社の日本郵政と合併させるのが柱で、現行法が「早期に売却する」としている金融2社(ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険)の株式を一定程度保有し続けることも盛り込んでいる。さらに、郵便局網を維持するための基金や政府による財政支援措置も創設するといい、まるで「親方日の丸経営への先祖返り」(大手行首脳)のような内容。
改正案を検討しているのは自民党の「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(会長・山口俊一衆院議員)。4月25日に開いた総会には郵政族議員ら200人近くが集まり、日本郵政グループの現状について「このままでは早晩、経営が立ち行かなくなる」などと危機感を共有。
はがきや封書の料金の大幅値上げを今秋に予定しながら、郵便需要の減少で数年後には再び大幅赤字に転落するという日本郵便の生き残り策を協議した。その結果、日本郵政グループへの公的関与を強化する民営化改正案を早急にまとめる考えで大筋一致した。
ただし、こんな郵政民営化の趣旨に逆行するかのような策謀には、金融界や市場から早くも反発の声が噴出。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は上場企業であることから投資家も異論を唱えている。日本郵政が株式を完全売却して政府関与から外れなければ、金融2社は「民業圧迫」の防止を理由にした業務の制約が解かれず、自由に融資を手掛けたり、幅広い商品の開発をしたりできない。そうなれば、業績向上が期待できなくなるから。
政治の理不尽な横やりに日本郵政は対抗姿勢を打ち出せていない。24年3月期の連結純利益は前期比4割近く落ち込む見通しだが、明確な成長戦略を描けていない。小泉純一郎政権以来の郵政完全民営化路線の行方はますます不透明になっている。