東京ニュービジネス協議会の新旧会長が特別対談 クリーク・アンド・リバー社会長 井川幸広 × ミス・パリ・グループ代表 下村朱美

オーナーで太っ腹の社長が多いNBC

 ─ 起業家支援とベンチャー企業の成長を後押しするのが東京ニュービジネス協議会(NBC)です。前会長が下村さん、現会長が井川さんということで、今回は日本のベンチャー育成の現状と課題を語ってもらおうと思います。下村さんは2014年から20年まで東京NBCの会長をつとめたわけですが、この10年間の手応えをどのように感じていますか。

 下村 わたしはNBCに入って本当に良かったと思っています。いろいろな経済団体や経営者の会合がありますけれど、わたしどものような中小企業にはピッタリの会だと思います。

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 他の団体ですと、勉強が難しくて、ついていけないなと感じたり、歴史のある会社ばかりの会合ですと、売上高や歴史、上下関係などを重視するようなところもございます。

 しかし、その点、NBCはオーナー社長が多くて、いわゆるサラリーマン社長が少ないんですね。決してサラリーマン社長が良くないと言っているわけではありませんが、オーナー社長は皆さん、話を聞いていても、特にわたしたち起業家にとって面白いなと思うところがたくさんあります。最後の責任は自分が取るといった心構えができています。大企業は会社の魅力、中小は社長の魅力から物事がスタートしている感があります。NBCでは、色々な社長に出会えて、多くのことを学ばさせていただいたと思っています。

 ─ われわれもオーナー社長に取材をしていると楽しいですよ。

 下村 何て言うか、皆さん、自分に自信があって太っ腹なんですよね。女性たちもこれから活躍しなければならないということで、女性経営者を前に、前に押し出してくれますよね。普通は「女のくせに」と言って、足を引っ張る人たちがいても不思議ではないのですが、そういう人たちもいませんし、本当に素晴らしい会だと思います。

 実はNBCの会長の打診を受けた2年前にわたしは離婚をしていたんです。心細さや怖さもあり世間に隠していました。それで現在の日本ニュービジネス協議会連合会会長(NSGグループ会長)の池田弘会長に打ち明けましたら「そんなこと気にしなくていいから」とおっしゃるんです。

 経済団体のリーダーになるというので、自分の中では、皆さんのお手本にならなければいけない、失敗のお手本になってはいけないと考えていたんですが、池田会長の言葉を聞いて覚悟が決まりました。

 その後も池田会長を筆頭に、本当に皆さん、協力してくれましたね。

 ─ これはありがたい言葉でしたね。井川さんは下村さんからバトンを受けて、2020年から会長をつとめているわけですが、今の下村さんの話も踏まえて、現会長としてはどのような現状認識でいますか。

 井川 下村さんがおっしゃったように、会員の皆さんは人がいいんです。だから、わたしも会話をしていて楽しいし、勉強になることばかりです。

 特に下村さんは初の女性会長ということで、苦労もされたでしょうし、一方でまた、新しいことにもどんどん挑戦されたと思います。下村さんが会長をつとめた6年間でかなりカルチャーが変わったと思うんですよ。

 わたしは以前はずっと幽霊会員でしたから、あまり昔のことを知らないのですが、下村さんの前と後ではかなりNBCの雰囲気も変わったと思います。

あくまでも「メンバー・ファースト」で

 ─ 例えば、どのように変わったと思いますか。

 井川 例えば、人を育てて、成長のための原動力をつくるところです。おそらく、悪い意味で、男性の方が派閥をつくったり、他人を寄せ付けないところがありますよね。

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 しかし、下村さんはそういうことが全く無くて、年齢も業種も違う人たちが一緒になって育っていく。そういう多様性のカルチャーをつくられましたので、わたしはその路線を踏襲しただけです。その意味では、やりやすかったですね。

 ─ その辺の壁を作らないというのは、下村さんも意識して心掛けたんですか。

 下村 意識したのではなく、わたしにとって普通のことなんですよね。

 井川 持って生まれた天性というか、下村さんのお人柄ですよ。

 下村 昔から男性だろうと、女性だろうと、子供でも、お年寄りでもわたしの接し方は同じなんです。井川さんも同じだと思いますが、おそらく人が好きなんです。

 わたしは人が好きだから、知らない人がいれば寄っていくんです(笑)。

 井川 そうでないと人は集まってきませんよね(笑)。

 今、東京NBCの会員が900名くらいで、来年くらいには1000名を超えると思うんですよ。ただ、われわれは数を増やしたり、規模を拡大することが目的ではありません。

 あくまでも「メンバー・ファースト」で、NBCにいることで人脈拡大につながるし、会社の事業発展につながるよねと。こうしたことを会員の皆さんがいかに実感できるかというのが、わたしの次の会長の一番のテーマになってくると思いますね。

 ─ 任期はいつまで?

 井川 来年ですから、2025年3月です。

 先ほど申し上げたように、NBCの会員の方々は皆、人がいいんです。会社の規模に関係なく、一人の経営者、一人の人間として扱うようなカルチャーがあるんですよ。

 そういうことを今の副会長や理事の方がよく理解していて、こうした土壌をいかに次世代につなげていくか。まさに下村さんがつくってきた土壌が社会に少しずつ根づいて芽を出し、この芽がだんだん膨らんでいっていますので、わたしの次の世代の人たちには、下村さんを含めた先輩方の思いを汲み取りながら、NBCを発展させていってほしいと思います。

 ─ 非常にいいお話を伺いました。今、NBCのメンバーのうち、女性経営者はどれくらいですか。

 井川 約900名のうち、女性は120~130名くらいだと思います。東京NBCを中心に全国の女性経営者の方々の集まりがあるんですが、本当にエネルギッシュですよ(笑)。

 下村 パワフルな方が多いのは事実ですね(笑)。

 わたしが会長をやっていた頃の東京NBCの会員は320~330名くらいでしたから、もう3倍になっています。しかし、その時から女性が50~60名くらいいたと思いますが、まだ倍にしかなっていませんよね。だから、早く3割くらいまでは増やして欲しいと思います。

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