〈主婦から突如、経営者に転身!〉川路洋子・光陽ホールディングス会長を直撃

サービスに特化する会社へ

 ─ 2021年に創業会長で夫の川路耕一さんが亡くなり、翌年、川路さんが会長に就きました。これまで会社経営とは無縁だった川路さんが突然、経営にあたることになったわけですが、経営全体を見ることになった今はどういう思いですか。

 川路 本当に突然のことでして、わたしは今まで夫がどんな事業をし、何をしていたか知りませんでした。ですから、それをこの会社に入ってから一つひとつ検証していって、今は会社としても、個人としても、いろいろな整理がようやく終わったところです。

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 自分がこういう立場になって初めて分かったのは、夫はなんと海外を含め、40社以上の会社をつくっていました。

 しかも、そのほとんどが設立しただけですぐに止めたり、実働しておらず、休眠しているような会社もありましたので、まずは整理すべき会社と残すべき会社を見極めなくてはならず、それをきちんと整理することから始めました。

 ─ 整理した結果、何社くらいに絞ったのですか。

 川路 結局、われわれの主力事業である証券会社「KOYO証券」と融資や不動産を扱う「SCHOLA(スコラ)」という会社を中心に、今のところ4~5社に整理しました。

 夫はどちらかというと、会社経営に関しましては、何でも自分で決めて、すぐに行動する、周囲の意見は聞かないタイプでした。わたしは逆に、周囲と相談しながら進めていくタイプなんです。周囲には、その道のスペシャリストの方々が数多くいらっしゃいますので、その方々の意見を聞きながら判断し、進めていくようにしています。

 ─ 性格が逆だと。

 川路 ですから、別に自分が多くの会社を経営し、抱え込むのではなく、信頼関係のある優秀な方々と協力しながら、一緒にいわゆるアライアンスを結びながら、唯一無二な会社にしたいと考えております。

 ─ 夫の川路さんはよく商品先物取引など、幅広い金融サービスを提供する〝金融総合商社〟を目指すと言っていたんですが、今後もそうした方向性を目指すんですか。

 川路 いや、これからはもう金融総合商社という考え方ではなく、規模は小さいながらも、お客様に対して徹底したサービスに特化する会社になろうと考えています。

 ─ 徹底した金融サービスの会社ですか?

 川路 いや、わたしが考えているのは単純な金融サービスではないんですよね。株を売買するとか、そういうことではなくて、例えば、株を取り扱うのであれば、株を通して、お客様は何をしようとしているのか。もちろん、お客様が儲かることは大前提ですが、お客様は何を目標にされていらっしゃるのか。

 そうしたトータルな相談をお受けしながら、お客様がお金という道具を使って何を目指していらっしゃるのか。そういうことのお手伝いができれば嬉しいと考えています。

 ─ 今年からは「新NISA(少額投資非課税制度)」も始まりましたが、こうした若い世代向けの資産運用も入ってくるわけですね。

 川路 そうです。しかし、わたしどもは新NISAはやりません。小額投資のお客様はネット証券や大きな証券会社に任せればいいと思っていまして、わたしどものメインのお客様はいわゆる高所得者の方々です。

 例えば、ネット証券などは手数料は無料ですが、きめ細かいサービスはありませんよね。しかし、最初はそれでいいのかもしれませんが、徐々に資産が多くなってくると、自分専用の詳しい営業マンをつけてほしいとか、相談相手がほしくなるんですよ。

 わたしたちは資産の多い方から、手数料もしっかりいただきますので、その分、きめ細かいサービスを提供しなくてはなりません。ですから、高所得者の方は相続や節税対策も含めて、いろいろなことを考えておられますので、そういうニーズに対してどう資産を運用していくのか。総合的にアドバイスができるような会社にしたいと思っています。

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