インボイス制度などの法改正をビジネスチャンスに
「当社は『スモールビジネスを、世界の主役に。』をミッションに掲げている。スモールビジネス(個人事業主や中小企業)が増えると、もっと世の中がバラエティに富んだ、イノベーティブなものになると考えて起業した会社。日本で起業をもっと身近なものにする。そういう世界をつくりたいと考えている」
フリー常務執行役員CSO(最高戦略責任者)の武地健太氏はこう語る。
昨年10月から始まったインボイス(適格請求書等保存方式)制度や今年1月の改正電子帳簿保存法の施行。これにより、今までデジタル化が遅れていた中小企業や小規模事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。
また、「2024年問題」と呼ばれる残業規制などの働き方改革により、生産性を向上させるため、会計や人事労務・販売などの業務データを一元管理できるERP(統合基幹業務システム)の需要が増加。こうした企業ニーズを捉えて、成長しているのが、クラウド会計ソフトを手掛けるフリーだ。
フリーは4月に三井住友海上火災保険と業務提携を締結。スモールビジネス向けに、統合型保険プラットフォーム『freee保険セレクト』を提供し、企業総合賠償責任保険や個人向け自動車保険などの商品を販売する。
今年秋には、コンサルタントやデザイナーなど、会社などの組織に属さないフリーランスに対しても、労災保険の特別加入の対象が拡大される。ただ、フリーの調査によると、損害保険へ加入している日本企業はまだ半数程度。経営や事業のリスクを感じつつも、特に事故への対策を講じていない企業は3割程度あるそうだ。
三井住友海上執行役員ビジネスデザイン部長の平野訓行氏は、「まだまだ保険はお客様にとって、めんどくさい、複雑というイメージがあると思っている。当社は個人事業主やこれから起業しようとしている若い方々にはなかなかアクセスできていないのが課題なので、フリーさんの力をお借りして接点を持てるというのは大きい」と語る。
大企業にとっては、限られた人員の中で、中小企業や個人事業主までを完全に網羅するのは難しい。そのため、スモールビジネスに特化したサービスを展開するフリーと協業する企業はこれからも増えるだろう。
「スモールビジネスに焦点を当てている会社はわれわれが唯一だと思っており、スモールビジネスの方々に〝マジ価値〟を提供できるのであれば、いろいろな企業と組んでいく。当社は会計が祖業だが、今後は経営全般を支えるプラットフォームになっていきたい。freeeという一つのサービス上でビジネスのいろいろな業務や機能がシームレスにつながり、完結するような世界を目指す」と語る武地氏。
日本企業の99%を占めるのが中小企業。スモールビジネスの活性化なくして、日本の活性化はない。そのための同社の挑戦は今後も続く。