リストラで競争力は向上するのか―─。
東芝(島田太郎社長)が国内従業員を数千人規模で削減する方向で検討していることが分かった。固定費を減らし、デジタル事業などに投資を集中して経営再建を加速する狙いだ。23年12月に投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)傘下に入って非上場化したことに伴う財務の負担が約2兆円に上っており、財務体質改善の意味合いもあるとみられる。
リストラの布石は打たれていた。東芝は23年12月、4つの分社体制を実質的に廃止。島田氏が東芝エネルギーシステムズや東芝インフラシステムズなどの主要4子会社の社長を兼務する体制に移行し、4社の法人格の統合も検討する方針を示した。総務や経理といった間接部門の固定費が重いという指摘が以前からあり、「JIPが東芝へのコスト削減圧力を強める」(金融筋)との観測がくすぶっていた。
従業員の削減に伴う割増退職金の支払いや再就職支援などで1000億円規模の特別損失が発生するとの見方も出ているが、東芝がそれに見合う効果を得られるかは見通しにくい。分社体制の廃止にはマネジメントを遠心力型から求心力型に改めたい思惑がのぞくが、各社の屋台骨を支えてきた従業員を削減するとなると、士気への影響や現場の混乱は避けられそうにない。
社内では「今まで耐えてきたのにリストラなんて、一難去ってまた一難か……」(中堅社員)という声も伝わってくる。また、成長戦略の実効性も問われ続けている。東芝はビッグデータ(大量データ)の分析や量子暗号通信、人工知能などを成長分野と位置付けるが、そもそも、こうした先端技術に明るい人材の確保は容易でない。JIPによる非上場化が実現するまでは、海外投資ファンドをはじめとするアクティビスト(物言う株主)との応酬で経営の混乱が続いた。
「ブランドイメージへの傷は大きく、中途採用には困難が伴う。リストラよりも既存従業員のリスキリング(学び直し)の方が重要なのでは」(業界関係者)
島田社長の構想力が引き続き問われそうだ。