「まさにその通りです」と、立憲民主党の渡辺創議員が語気を強めた。立憲の議員が自民党の実力者の主張にわざわざ全面的に賛意を示すという、ちょっと珍しい光景だった。
4月19日の衆議院本会議。「農政の憲法」と呼ばれる食料・農業・農村基本法の改正案討論で渡辺議員はこう語った。
「自民党の森山裕・総合農林政策調査会最高顧問は昨年5月、JA全中の大会で『新自由主義が軽視してきた食料自給、環境、地方重視、食料安全保障の強化も含めて、豊かで強固な日本社会、経済を作り上げていくことが大事だ。改革や成長は必要であるが、新自由主義的な改革は、持続可能性や、広く国民のためになるのか。この改正案は新自由主義からの転換である』と発言したと報じられています。まさにその通りです」
食料・農業・農村基本法の制定は1999年で、農業を産業として強化する方針を鮮明にしたと言われる。25年たち、振り子の針が逆に振れようとしているようだ。
今回の改正案では、肥料や農薬などの資材価格の転嫁を促して「適正な価格形成」を促す施策を国に求めた。また、「多様な農業者」という言葉を使い、農地の確保のために、小規模や零細な農業者、兼業農家も施策の対象に含めることを明確にした。
立憲民主は、自分たちの修正案が認められなかったため、改正案に反対に回ったと説明。与野党とも、農業を保護していく姿勢を打ち出した形だ。
この改正案に、「構造改革が遅れる」と専門家から反発の声もある。農林水産省の坂本哲志大臣も実は、産業として強くする方針自体は変わらないと重ねて答弁している。このため、この改正案の方向性が分かりにくくなっている。
農業は普通の産業なのか。それとも一定の保護が必要なのか。実は長年、繰り広げられてきた論争でもある。農水省の官僚の中には、保護農政に戻ることに懐疑的な考えも根強いともいう。今後、農水省からどんな具体的な施策が出てくるのか。