東レは5月15日、米・Dow、スペイン・COMEXI GROUP INDUSTRIES、サカタインクス、SGK JAPAN(シャークジャパン)と共同で、リサイクル性と印刷プロセスにおけるCO2削減を実現し、経済性との両立が可能な表刷りモノマテリアルフィルム包装材技術を開発したことを発表した。
リサイクル性への要求が高まるフィルム包装材
軽量性や透明性、加工のしやすさなどの特徴を持つフィルム包装材は、食品や洗剤の詰め替えパウチなどの包装用途に幅広く用いられており、今後も世界的な人口増加に伴い、フィルム包装材市場は年率4~5%で成長していくと予測されている。しかしながら、現在使用されているフィルム包装材は、各種機能を有する異素材のフィルムを貼り合わせさまざまな機能や形状を付与しているため、リサイクルが困難という課題があるとする。
そんな中EU(欧州連合)では、2030年末までに全包装材の100%リサイクル可能化を掲げ、2024年4月には包装材廃棄物の削減に関する新法が暫定合意された。また欧州の包装業界団体であるCEFLEXでは、包装材と包装廃棄物に関する指令に対応した包装材のリサイクルに関するガイドラインを作成し、リサイクル適性の段階表示(RecyClass)などを提示しており、推奨されるフィルム包装材の構成として以下のように定めているという。
CEFLEXが推奨するフィルム包装材の構成
- 90重量%以上をポリエチレンまたはポリプロピレンに統一化するモノマテリアル化
- 食品の保存性を確保するためのガスバリア層は5重量%以下
- インキや接着剤などのその他成分が5重量%以下
5社の強みを集結させ新たなフィルム包装材を開発
こうした要求の高まりに対し、東レなど5社は、先述の推奨構成を満たしつつ、プラスチック使用量自体を削減するとともに、印刷工程で発生するCO2を削減可能な包装材技術の開発に着手したとする。
この取り組みにおいて、東レは、現在用いられている有機溶媒現像に代わり、水での現像が可能な製版プロセスと、高精細な印刷品質を実現する新規フレキソ版「RESOLUCIA」を、フィルム包装材印刷に適用。Dowが開発した高性能ポリエチレン樹脂「INNATE」「AFFINITY」をベースとするガスバリア性を持ち表刷り適性の高いポリエチレンフィルム、サカタインクスが開発した「EBフレキソインキ・ニス」を用いて、COMEXIのEBフレキソ印刷機で印刷物を作成したという。なお、同印刷物は包装材を構成するフィルムの枚数削減につながる表刷り印刷を適用。またSGK JAPANのデザイン設計により、インキ使用量を抑えつつ意匠性を両立したとしている。
東レなど各社は今後、今回開発された印刷技術で連携し、食品や日用品向けフィルム包装への標準化に向けて、流通やブランドオーナーに対する開発品の提案を進めることで、フィルム包装業界の環境負荷低減や持続可能な社会の実現を目指すとする。またこの技術を用いたフィルム包装材のサンプルについては、5月28日から6月7日までドイツ・デュッセルドルフで開催される印刷展示会「DRUPA 2024」にて、連携各社によるブースで展示されるとのことだ。