保険料を米ドルなど、外貨で運用する「外貨建て一時払い保険」を巡り、金融庁が商品を開発する保険会社や売り手の銀行などに対して、販売管理体制の見直しを求めた。短期間で解約し、同様の商品に乗り換えさせるなど不適切な販売手法が横行しているとされるからだ。
監督局幹部は「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)に反する」と問題視しており、今後、悪質なケースが見つかれば行政処分に発展しそうな雲行きだ。
生保各社は日銀がマイナス金利政策を導入した2016年以降、外貨建て保険に注力するようになった。国内金利の一段の低下で円建て保険の運用が困難となった中、米ドルや豪ドルで運用して高利回りをアピールできる外貨建て保険に活路を見出そうとしたためだ。
問題はその販売手法。金融庁が商品供給元の保険会社8社と販売を担う銀行19行を調べたところ、大半が満期10年であるにもかかわらず、契約者の約6割は加入後4年以内の短期間で解約。その後に同種の商品に乗り換えさせる「回転売買」が横行していた。商品の多くは運用益があらかじめ定められた目標額に達すると自動的に利益が確定され、円建ての運用に切り替わる設計となっている。
この際、顧客に十分なメリット・デメリットを説明せず、再び高利回りを誘い文句に、別の外貨建て保険に乗り換えさせるケースが相次いでいたという。
金融庁は外貨建て保険の問題を度々取り上げてきた。背景には、保険会社や銀行が収益最優先で、顧客の真のニーズにあった最善の商品を提供してこなかったのではないかとの強い疑念がある。今後の調査で顧客軽視の経営姿勢が確認されれば、行政処分も辞さない構えだ。