5月9日、Duolingo社・Off Topic共催による「Manu Orssaudトークセッション」が開催された。登壇はDuolingo Global CMOのManu Orssaud(マニュー・オーサード)氏と、Off Topic 代表取締役 宮武徹郎氏。宮武氏がモデレーターを務めるかたちで、ユーザーに愛されるサービスをどのように展開していくかについて、話が進んだ。
マーケティング戦略の転換点はマスコット
冒頭、Orssaud氏はDuolingo社が提供する無料語学学習アプリ「Duolingo」の現状と、マーケティングについて事例を交えて説明した。同社は最高の教育を提供することと、誰でも利用できるようにすることをミッションにしており、現在、約9700万人の月間アクティブユーザーを持つという。
「ミッションに基づき、無料で提供するというアプローチをしています。だからこそ、ビル・ゲイツからシリアの難民まで、誰もが同じコンテンツで学べるのです」(Orssaud氏)
マーケティングに関しては従来、語学学習のメリットを訴求するなど、他の学習アプリと差別化するような施策を行っていなかったそうだ。転換点となったのは「Duo(デュオ)」という緑色のフクロウのマスコットを企業の“顔”に決めたことだと話す。語学学習そのものの訴求から、マスコットのキャラクターを利用し、ユーザーに楽しみを与えることに主眼を置くようにしたことで、「Duoを見れば見るほど、ブランドを思い出してもらえるようになり、この戦略が非常にうまくいった」(Orssaud氏)のだ。そこから同社は、ソーシャルファーストのマーケティングを加速していく。これまでのマーケティングの取り組みの中で、Orssaud氏が成功例として挙げたのは、NFLの優勝決定戦・スーパーボウルの放送時に行った5秒間のスポット広告だ。多くの企業がセレブ起用などを行う中、同社はDuoが登場するのみ。加えて、この広告放送後に米国のユーザー約200万人にプッシュ通知を行い、その約1/4がDuolingoに再アクセスするという目覚ましい成果を残した。
「これは、いかにクリエイティビティを活用しているかを示す、完璧な事例です。タイムリーな通知は、最も再エンゲージメントにつながりました」(Orssaud氏)
また、日本国内で行ったマーケティングの事例として挙げられたのは、胴上げイベントである。これはDuolingoのユーザーが連続でレッスンした日数を指す「連続記録」を持ち寄り、その記録数に応じ、胴上げをしてもらえるというものだ。この事例にも、人を楽しませることを重視する同社の姿勢が表れている。
サービスの“人格”が伝わるマーケティングを重視
Orssaud氏の説明に続き、宮武氏が聴講者の質問を代読するかたちで、トークセッションがスタートした。
まずは、Orssaud氏のキャリアジャーニーについてである。約9700万人の月間アクティブユーザーを抱えるDuolingoのマーケティング部門を率いる同氏は一体何者なのか、というわけだ。
Orssaud氏は広告代理店を経て、SONY PlayStationでデジタルマーケティング、Spotifyでグローバルマーケティングに携わった経験を持つ。「SONY PlayStation時代はデジタル変革の真っただ中だった」と言い、「消費者行動が変わっていく時期にプレステのマーケティングに携わることができ、良い経験になった」と振り返る。一方、Spotify時代は「(主要ユーザー層よりも)年齢層が上の人にどう使ってもらえるかを考え、キャンペーンを仕掛けるなど、新たなチャレンジができた」という。その後、「SONY PlayStationとSpotifyの経験をミックスして、能力を発揮できると考え、Duolingo社への参画を決めた」と話した。