外国為替市場で円相場が約34年ぶりの円安水準が続き、経済への影響が懸念され始めた。政府・日銀による為替介入で急激な為替変動を一時的に抑えることができても、円安基調が続けば原材料費の上昇など、経営へダメージは少なくない。強い米経済を背景に「金融市場は当面は円安を黙認する可能性がある」(財務省幹部)ことも想定され、今後も鈴木俊一財務相の対応が焦点になりそうだ。
4月23日の閣議後記者会見で、鈴木氏は為替相場の動きについて「高い緊張感をもって見ている」と言及。日本の金融当局トップ自ら積極的な対応を辞さない姿勢を強調していることもあり、市場では円安進行に一定程度歯止めがかかっているとみる向きが多い。
ただ、為替以上に心配なのが実体経済の動向だ。
今年の春闘は主要企業の賃上げは高い水準の一方、特に地方の中小・小規模事業者の中には、賃上げを見送る動きが目立ってきた。
円安に加え、慢性的な人手不足に伴う人件費上昇や電気・ガス代の政府補助打ち切りも重なり、企業も家計も先行きに慎重になれば、政府の目指す経済の好循環はままならない。
内閣支持率が低迷する中、企業経営者や家計が所得増を実感できなければ、岸田文雄首相だけでなく、鈴木氏も批判の矢面に立たされるだろう。為替介入を巡る答弁では事務方の想定問答集を淡々と読む場面が目立つが、国民への説明で「棒読み」は通じない。
鈴木氏には、多くの国民から納得を得られるような、真摯な対応が求められる。