大日本印刷(DNP)は5月14日、リサイクルに貢献するポリプロピレン(PP)をベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立したことを発表した。
国内では、年間約350万台もの自動車が廃車となっている。2002年に制定された自動車リサイクル法により、廃車のうち95%以上がリサイクルされるようになった中でも、解体・破砕後に残るプラスチックくずなどの自動車シュレッダーダスト(ASR)については、サーマルリサイクル(焼却処理)が行われているという。一方で環境問題に対する関心が高い欧州では、近い将来に自動車への再生プラスチック使用が義務化される見込みであり、国内外の自動車メーカーや関連部材を取り扱う企業は、その対応を急いでいる最中だ。
こうした中で、リサイクルに適した素材で自動車部品としても多く使用されるPPは、今後もさらに使用量の増加が見込まれる一方で、加飾フィルムのベースとして使用すると、インキの密着性が弱いため高い意匠表現と物性・成形性の両立が難しいという課題があったとする。
そこでDNPは今回、同社が長年培ったPPフィルムへの印刷・加工技術やノウハウを活かして、高い意匠性と物性・成形性を両立させることを実現し、PPをベースとした自動車用加飾フィルムの量産技術を確立。自動車のリサイクルに貢献するとしている。またPPは、現在加飾フィルムにおいて汎用的に使用されているアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)よりも原料製造時のGHG(温室効果ガス)排出量が少ないため、自動車部品全体でのGHG排出量削減への貢献が期待されるとのことだ。
DNPは、環境問題への対応を重要な経営課題の1つに位置付けており、特に脱炭素社会の実現に向けては、2050年度までに自社拠点での事業活動にともなうCO2などのGHG排出量を実質ゼロにするという目標を掲げるとともに、製品・サービスを通じたGHG排出量削減を進めている。その一環として、今回のリサイクルにも貢献する環境配慮型の自動車用加飾フィルムも、国内外の自動車業界を中心に提供を広げ、2030年度までに累計100億円の売り上げを目指すとともに、同じく環境配慮型の製品として、塗装工程を必要としない外装用フィルムも開発し、同様に展開していくとしている。
なおDNPによると、今回発表された新製品については、5月15日から6月5日までSTAGE1が、7月10日から31日までSTAGE2が開催される「人とくるまのテクノロジー展 2024 ONLINE」にて詳しく紹介する予定とのことだ。