日本電信電話(NTT)と東京工業大学(東工大)は5月13日、ハイブリッドワーク環境下における従業員のウェルビーイング向上を目的に実施した、日本と米国のハイブリッドワーカーを対象とした調査の結果を発表した。
今回の調査では、ハイブリッドワークにおける職場の暗黙の了解(社会規範)と、ハイブリッドワークをしている従業員のウェルビーイングの関係性について確認した。調査の結果、日本よりも米国のハイブリッドワーカーの方が、命令的規範を強く感じている人ほど仕事におけるウェルビーイングが高い傾向にあることが明らかになった。
研究の背景
現在は新型コロナウイルスの感染状況が抑制されつつある中で、働く環境のハイブリッド化が進む。これにより従業員の生産性向上や企業の採用力強化といった影響が期待される。
ハイブリッドワークは、いつ、どこで働くかに関する柔軟性が高い働き方である一方で、働き方に関する社会規範は確立されておらず、ハイブリッドワークにおける社会規範と従業員のウェルビーイングの関係性が、文化に応じて変化する可能性がある。そこで今回、日本と米国のハイブリッドワーカーを対象に、ハイブリッドワークにおける社会規範と従業員のウェルビーイングの関係性を調査したとのことだ。
材料と方法
日本または米国に在住する18歳~64歳のハイブリッドワーカーを対象に、Webアンケート調査とインタビュー調査を実施。Webアンケートは日本人および米国人がそれぞれ1000人、インタビュー調査にはそれぞれ12人ずつが回答した。
仕事におけるウェルビーイングを従属変数とし、期待される勤務形態、命令的規範の強さ、命令的規範への適合意欲、記述的規範の強さ、記述的規範への適合意欲をそれぞれ独立変数とし、国を調整変数とする重回帰分析を実施した。
結果
日米の共通点として、命令的規範への適合意欲と記述的規範の強さが仕事におけるウェルビーイングとの間に有意な正の関係があることが明らかになったという。(有意水準5%で、年齢、性別、役職の影響を統制)
一方で、命令的規範の強さと国との交互作用が有意であり、単純傾斜分析の結果、日米で命令的規範の強さと仕事におけるウェルビーイングの関係性が異っていた。具体的には、米国では命令的規範の強さと仕事におけるウェルビーイングの間に有意な正の関係がみられたものの、日本ではそのような相関関係が見られなかった。
インタビューの結果から、日本の参加者は週○日リモートワークや週〇日出社するべきだと考える命令的規範を自由の制約として否定的に捉える一方で、米国の参加者は週○日リモートワーク / 出社するべきだと考える命令的規範を快適に働くための基盤として肯定的に捉える可能性が示唆された。
これは、米国の雇用保護規制が日本よりも緩やかで、会社からの指示に従わないと失業リスクが高まるため、働き方における指示の明確さが重視される傾向があるためだと考えられるという。日本の雇用保護規制は米国よりも厳しく失業リスクが低いため、働き方における指示の明確さよりも個人の利益や自由が重視されると考えられる。