日本電信電話(以下、NTT)は5月10日、決算会見を開き、2023年度の連結決算について報告するとともに2024年度の業績予想を発表した。2023年度は対前年比で2348憶円(1.8%)の増収、939憶円(5.1%)の増益となった。一方、2024年度の業績予測では増収減益を見込む。
2023年度連結決算 - 営業収益・営業利益・当期利益は過去最高
2023年度の決算は、営業収益は対前年比で2384憶円増となる13兆3746憶円、営業利益は939憶円増となる1兆9229憶円、当期利益(被支配持分帰属分控除後)は664億円増の1兆2795憶円となった。いずれも過去最高を更新した。
営業収益は、NTTアノードエナジーなどが株主であるエネットの電気料収入減を受けて2600憶円ほど減少したが、総合ICT事業や地域通信事業、グローバル・ソリューション事業の増収によって、結果的に増収となっている。なお、うち約2000憶円が為替の影響だという。
EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization:税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えた利益)は対前年で1279憶円(3.9%)増の3兆4181憶円、EPS(Earnings Per Share:1株当たり利益)は2023年度を最終年度とする前中期財務目標で掲げていた14.8円を達成し、15.1円となった。
2024年度業績予想 - 営業利益・当期利益は対前年で減益予想
2024年度の業績は、営業収益は対前年で854億円増の13兆4600憶円、営業利益は1129憶円減の1兆8100憶円、当期利益は1795憶円減となる1兆1000憶円と予想されている。
事業セグメント別では、特に地域通信事業において、ノンコア資産のスリム化の反動や災害復旧費用の増加などを受け、対前年で減収減益となる見込みだ。島田明社長は、「事業の選択と集中やオペレーション効率化などのコスト削減施策を通じて2025年度には対前年で増益へと反転させたい」と説明した。
また、「2024年度は一旦減益の計画であるものの、2027年度までの新中期目標達成に向けて成長分野の拡大とコスト改造改革に積極的に取り組む」と語るなど、前向きな姿勢も見せた。
2023年度の期末配当は、当初の配当予想から0.1円増となる2.6円。1株当たりの年間配当は前年から0.3円増配し5.1円だ。2024年度の配当予想はさらに0.1円増となる5.2円で、14期連続での増配となる見込み。
ドコモのグローバル展開に向けた新会社を7月設立
決算会見の中で、NTTドコモ・グローバルの設立が発表された。NTTドコモグループにおいてグローバル事業を統括し、事業横断で統合的かつ機動的にグローバル事業を推進するための新会社を7月に設立するという。
NTT DigitalやOREX SAI、海外の既存グループ会社の一部機能を新会社へ移管する。新会社ではWeb3関連サービスの海外展開や、海外の通信キャリアに向けたOpen RANの導入支援などを展開する。
個別医療を提供する新会社「NTTプレシジョンメディシン」を設立
また、同社はNTTプレシジョンメディシンの設立についても発表した。プレシジョンメディシンとは、患者個別に最適化された医療を目指す概念を示す用語。プレシジョンメディシンを実現するためには、個人にひも付く臨床データの収集と分析が欠かせない。
そこで、NTTプレシジョンメディシンではNTTグループが持つリソースやアセットを活用して、医療機関などとの連携を通じてヘルスケアデータを収集し、製薬企業や研究機関などと共に研究開発成果の社会実装を進める。
CCXOおよびCAIOをそれぞれ新たに任命
NTTは新たに、CX(Customer Experience:顧客体験)に責任を持つCCXO(Chief Customer Experience Officer)と、AIの活用を推進するCAIO(Chief Artificial Intelligence Officer)を任命する。
CCXOはNTTグループの主要各社で任命される。顧客視点でのサービスとソリューションの価値を明確にし、顧客に選ばれ続けるための改善とアップデートを図るという。顧客体験価値の提供に基づく「顧客エンゲージメント指標」を役員の業績連動報酬に反映する。
CAIOは2人が任命される。顧客に提供するAIサービスやソリューションの開発とともに、社内における業務プロセスをAIファーストへと転換する。さらに、AIガバナンスの確立なども進めるとのことだ。