NTT東日本は5月10日、2023年度決算および2024年度業績予想について発表した。2023年度の営業収益は前年比83億円増の1兆7,105円、営業利益は前年比132億円の2,986円、当期純利益は前年比45億円増の2,069億円となった。2023年度は増収増益、12期連続の増益を達成し、過去最高益を更新した。
増収増益の背景には、2023年度を最終年度とする前中期目標の達成に向け、積極的なノンコア資産のスリム化を推進した影響があるという。
2024年度は、2023年度に実施したノンコア資産のスリム化の影響を除き、増収となる計画としている。
NTT東日本 代表取締役社長 社長執行役員 澁谷直樹氏は、2024年度の業績予想について、「省庁の需要が好調であるほか、中小企業においてマネージドサービス、VPN 、フレッツ 光クロスの10GBが順調に伸びている。ノンコア資産のスリム化の反動はあるが、ノンコア資産を除くと、自力では初めてトップラインが上がる。2024年は増益基調に戻すことに挑戦する重要な年」と説明した。
続いて、澁谷氏は稼ぐ力を復活させるための施策として、以下4点を紹介した。
レガシー系サービスの移行、CX×DXによる顧客エンゲージメント向上
同社は2000億円規模のレガシーサービスを抱えているが、これらを代替サービスへ移行させることで、収入基盤を最大限維持することを狙う。
代替サービスの一つとして、今年4月より、モバイル網を活用した無線による固定電話「ワイヤレス固定電話」の提供を開始している。ワイヤレス固定電話を提供する際は、他事業者からモバイル網を卸契約で調達し、NTT東日本と西日本のネットワークと組み合わせて提供される。
このワイヤレス固定電話と光回線電話を活用して、新規メタル敷設を抑止し、メタルコストのミニマム化を図る。
また、CX(顧客体験)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を掛け合わせることで、顧客エンゲージメントの向上を目指す。具体的には、「シンプルな業務フローの実現」「業務システムの内製化の推進」「紙や人をベースにした事業のデジタルサービスへの移行加速」といった施策に取り組む。
これらの施策により、約3000人を創出し、約400億円の削減が見込めるという。
高速化ニーズを捉えた光需要の掘り起こし
澁谷氏によると、光回線は2年前までは手付かずだったが、この2年で挽回する手を打ってきたことから、プロバイダーが広がっているという。
光回線の需要掘り起こしとしては、光クロス(10Gps)を東日本エリア全県域に拡大するほか、マンション・再開発ビルへの設備を拡張していく。
地域の顧客のロイヤルカスタマー化
加えて、光回線周辺のビジネスとして、法人営業のSIを広げる計画だという。「光回線周辺のビジネスは、やっと増収に転換でき、100億程度伸ばせる見込みが立ってきた」と澁谷氏は語っていた。
具体的には、自治体や公共機関へのデジタル化をしえんするとともに、中堅中小企業のICT環境をプロアクティブにサポートする。
増大するトラフィックに対応するネットワークの強化
ネットワークの強化策としては、既存アセットのアップデートとネットワーク基盤の増強に取り組む。
澁谷氏は、「光技術、エンジニア、まちづくりエキスパートといった当社の強みを社会に役立てたい。また、次世代のデジタル基盤にアップデートして、地域のアセットにシェアリングしていく」と述べた。
ネットワークの基盤としては、データセンターのコネクティビティ基盤を増強し、IX事業者を誘致する構えだ。事業者の接続を増やすことで、コネクティビティを最適化する。
将来は、IOWN-APNを活用して、陸揚げ拠点や地域の事業者の接続性を高めて、「日本をアジアのデータハブにしたい」と澁谷氏は意気込みを見せていた。