日本にとって中国は依然として最大の貿易相手国だが、今後日中の経済・貿易関係はよりいっそう不安定化する恐れがある。
最近、軍事目的に使用される可能性がある半導体の先端材料などを日本企業が輸出する際、日本政府が企業に政府への事前通知を義務づけようとしていることについて、中国が強く反発した。
中国商務部(日本の経済産業省に相当)はこれについて、半導体関連の輸出規制は日中の企業間における通常の貿易に深刻な影響を与えるだけでなく、世界のサプライチェーンの安定を損なうとし、謝った行動を取らないよう日本を強くけん制した。また、中国企業の正当な権利や利益を断固として守り抜くため必要なあらゆる措置を取るとも警告した。
日本政府が先端材料の対中輸出に規制を掛けようとする背景には、米国からの要請がある。バイデン政権は2022年10月、中国による先端半導体の軍事転用というリスクを回避するため、先端半導体そのものの獲得、製造に必要な材料や技術、専門家の流出などを防止する輸出規制を強化したが、昨年1月には半導体の製造装置に強みを持つ日本とオランダにも規制に加わるよう要請し、日本は昨年7月、14nmプロセス以下の半導体に用いられる製造装置として、露光装置や洗浄装置、検査装置など23品目の輸出規制を始めた。
これによって中国の日本への不満が膨れ上がった。その後、中国は希少金属のガリウム、ゲルマニウム関連の輸出規制を強化した。日本はその多くを中国からの輸入に依存しており、これは23品目の輸出規制への対応措置と言えよう。また、中国は昨年8月には福島第一原発の処理水放出に伴い、日本産水産物の輸入を全面的にストップしたが、これもその延長線上で考えられよう。
そして、今回の中国商務部による発言も同じようにこの延長線上で我々は捉える必要がある。米国は安全保障に直結、関連するケースでは中国への貿易規制に遠慮はないので、今後も日本への同調圧力は避けられないだろう。日本は昨年7月の輸出規制をさらに強化としようと検討しているが、中国は今日それに反発している。
中国の全国人民代表大会の常務委員会は4月下旬、貿易相手国が条約や貿易協定に違反して中国からの輸出品に関税や規制などを仕掛けた場合、中国が当該国からの輸入品に報復関税などの対抗措置を取ることを可能にする関税法を可決した。関税法は12月1日から施行されることになっているが、これも他国からの貿易規制の圧力には屈しないとする中国の姿勢と捉えるべきだろう。
仮に、日本が米国からの要請に応じる形で半導体関連の対中輸出規制をさらに強化すれば、中国は日本からの輸入品に対して高い関税を設けたり、日本が中国に深く依存する品々を中心に輸出規制を強化する可能性が考えられよう。