中外製薬、国立がん研究センター中央病院、大阪医科薬科大学病院、MICINは5月8日、患者の臨床試験へのアクセス向上を目指して、DCT(Decentralized Clinical Trial:分散化臨床試験)実施体制を導入し、進行固形がん患者を対象とした中外製薬主導の第I相臨床試験においてDCTを開始したことを発表した。
取り組みの背景
新薬候補に対する臨床試験は限られた医療機関で行われるため、治験実施医療機関から居住地が遠い患者は、臨床試験に参加したくても通院に伴う時間的または経済的な負担により断念するケースが多い。患者が臨床試験にアクセスしやすい環境の整備は製薬企業をはじめ臨床開発の課題となっている。
国立がん研究センター中央病院の調査(Travel Time and Distance and Participation in Precision Oncology Trials at the National Cancer Center Hospital)によると、移動時間が片道120分を超えると臨床試験への参加率が減少傾向にあるという。また、がん患者を対象とする第I相臨床試験は薬剤の安全性を評価する試験であるため、患者の安全を確保しながら状態を注意深く観察する必要があり、実施できる医療機関は限られる。
近年は従来の臨床試験に対する新たな手法として、患者の来院に依存しないDCTが注目される。国内でもガイドラインが整備され始め徐々にDCTを導入する臨床試験が増えているものの、がん領域ではまだ限られている。
臨床試験の概要
今回実施する試験は、中外製薬が主導する進行固形がん患者を対象とした第I相臨床試験。国立がん研究センター中央病院が治験実施医療機関として参加し、DCTによる負担軽減効果が期待できる、国立がん研究センター中央病院への移動時間が片道120分を超える地域にある大阪医科薬科大学病院がサテライト医療機関として参加する。
試験の一部の来院では患者は治験実施医療機関の代わりにサテライト医療機関に来院し、オンライン診療を活用して臨床試験に関わる検査や評価が受けられる。オンライン診療にはMICINが提供するDCTプラットフォーム「MiROHA(ミロハ)」を用いており、eConsentを活用した遠隔再同意も実施予定。