ガートナージャパン(Gartner)は5月9日、日本の大企業および中堅企業と海外企業(米国、ドイツ、英国)を対象に、AIに対する組織的な取り組み状況に関する調査をそれぞれ実施した。その結果、日本企業のAI専門組織の設置割合は、海外企業の半分にとどまっていることが明らかになった。
日本の大企業でAI専門の部門を設置している企業は38%
AI専門の部門やチームを設置している割合は、海外企業では76%にのぼり、12カ月以内に設置を予定していると回答した割合も23%と、ほぼすべての組織で1年以内にAI専門の部門かチームが存在していたという。
一方、日本の大企業でAI専門の部門やチームを設置している割合は38%、12カ月以内に設置を予定していると回答した割合は8%と、1年後も半数以下の企業にしか専門組織がないことが予想される結果となった。
日本企業のAIに対する興味関心は海外と同様に高いと考えられることから、今回の結果は、企業としての姿勢や取り組み方の違いが表れたものとGartnerは見ている。
また、AI専門の部門やチームを率いているのは誰かについて尋ねたところ、海外企業では主に最高情報責任者(CIO)、最高技術責任者(CTO)、最高データ/アナリティクス責任者(CDAO)の順で回答が挙げられたのに対し、日本では約3分の1の企業がIT部門のリーダーを挙げ、次いでCIO、IT部門以外の事業部門リーダーがAI専門の部門やチームを率いていることが明らかになった。
AI技術を導入する際の障壁は「人材不足」
AI開発に必要な人材とスキルに関する現状について十分確保できている割合は、海外企業が22%であったのに対し、日本の中堅企業は10%、大企業では7%であった。一方、「慢性的に」および「時として」人材が不足しているという回答は、海外が26%なのに対し、日本の中堅企業は34%、大企業では64%となっている。
人材の不足を補うには、既存人材の教育、外部採用、外注のいずれかの手段が考えられるが、調査結果を見ると、必要に応じて確保できるという回答が海外企業では52%であったのに対し、日本の中堅企業では56%と海外を上回った。一方で、日本の大企業は29%と人材の枯渇感が強く感じられる結果となっている。
また、AI技術を導入する際の障壁について尋ねると、日本の大企業では、「人材の不足」「データの収集や品質の問題」「技術的なスキルの不足」が突出しているのに対し、中堅企業では「人材の不足」に加え「AIのユースケースが見つからない」「事業部門を巻き込めていない」「プロジェクトの計画の問題」が上位となった。
海外企業においては、日本企業ほど突出した回答はないものの、AIモデルに対する信頼の不足、AIの倫理・公平性・偏見に対する懸念、AI技術の導入時の問題が多かったという。