生成AIの登場による効率化や自動化がデジタル広告市場に大きなインパクトをもたらし始めている。米Metaは5月7日(現地時間)、広告主向けの生成AI機能の強化を開始した。それにより、フルイメージの生成が可能となり、またテキスト生成を広告クリエーションにより効果的に利用できるようになる。
Metaは2023年5月に、広告主向けの新しいツールや機能の初期バージョンのテスト環境「AIサンドボックス」を導入し、同年10月に背景生成、画像のアスペクト比変更に合わせた調整、テキストバリエーションなど広告クリエイティブ向けの生成AI機能を展開し始めた。
今回の強化で、背景だけではなく、オリジナルの広告クリエイティブから完全なイメージバリエーションを生成できるようになった。たとえば、コーヒー豆のビジネスが製作した湯気の立つコーヒーカップの広告に対し、生成AI機能が緑豊かでのどかな農場の風景など他のバリエーションを作成したり、コーヒーカップに調整を加えるなどして、クリエイティブの選択肢を広げてくれる。この機能はすでに展開が始まっており、さらに今後数カ月以内に、テキストによるプロンプトも利用できるようになる予定である。
その他、テキストオーバーレイ機能が追加され、ブランドが利用しやすい12種類の書体オプションを選択できるようになった。また、クリエイティブアセットを異なるアスペクト比に合うようにシームレスに調整できる画像拡張機能を、InstagramとFacebookのリールおよびフィードで利用できるようになった。
テキスト生成機能は、メインのテキストに加えて広告見出しのバリエーションの作成にも対応する。また、過去のキャンペーンやテキスト入力に基づき、主要なセールスポイントを強調し、生成されたテキストにブランドのトーンを反映させる機能を現在テスト中である。この機能は、新世代の大規模言語モデル「Llama 3」を用いて間もなく構築される予定。テキスト生成のアップデートも展開が始まっており、年内に全世界で利用できるようにすることを目指している。
広告クリエイティブに生成AIを活用することで、企業が多様な広告をより早く作成でき、クリエイティブの多様化戦略の構築など、よりクリエイティブで戦略的な仕事に集中することが可能になる。Metaの生成AI機能による背景生成をテストしたCasetify(モバイルデバイス向けアクセサリ)のケースでは、広告費に対するリターンが13%増加したという。
一方で、完全なイメージバリエーションの生成のように、生成AIが広告クリエイティブに深く浸透していくと、実際の製品とは異なる製品や実在しない製品のイメージが生成されるようになるかもしれない。消費者の誤解を生む可能性や悪用される可能性の懸念も広がっている。