「心理的、情緒的に得られる価値を求める昨今の社会的傾向を背景に、顧客体験価値が重視されている」と話すのは、パルコ 店舗事業本部 顧客政策部 部長の安藤彩子氏だ。リアル店舗であるPARCOでのタッチポイントと、自社アプリやECサイトでのデジタルのタッチポイントの両面において顧客との関係づくりを担う顧客政策部では、顧客への新たな価値を創造し、顧客体験価値を向上させるためのDXに取り組んでいる。

4月16日に開催された「TECH+セミナー コンタクトセンター向け 成功ストーリーを支える『顧客体験DX』」に安藤氏が登壇。同社でのDXの事例を紹介しながら、顧客体験価値を向上させるために必要な考え方について説明した。

  • パルコにおける顧客タッチポイント

顧客体験価値は、心理的価値も含めた経験的ベネフィットの総合的な価値

安藤氏はまず顧客体験価値について、企業のサービスやプロダクトそのものの価値を指すのではなく、利用や購入の前後の体験も含め、機能的価値や心理的価値など顧客が感じる経験的なベネフィットの総合的な価値のことであると説明した。価値が物理的、機能的なものに限られたり、一時的なベネフィットに過ぎないものだったりすれば、顧客に十分な充足感を与えられない。企業としては、サービスやプロダクトの利用だけでなく、その後の時間まで含めて、どれだけ顧客体験価値を提供できるかを考えることが必要なのだ。

こうしたトータルな価値として顧客体験価値を提供することは、企業にとってもメリットがある。まずは信頼感の向上だ。機能、情緒や社会的関係などにおいて付加価値を提供できれば、企業への信頼感が向上する。そして認知向上、新規顧客獲得のチャンスも広がる。今やSNSなどの口コミは、消費者の意思決定に対する影響が絶大だ。顧客が価値を感じたことを発信すれば、サービスやプロダクトの認知が上がり、新規顧客の獲得につながっていく。さらに競争力の強化、差別化といったメリットもある。特別感を感じられる心理的な付加価値を提供できれば、顧客はファンになり、そのサービスやプロダクト、ブランドが選ばれるようになる。つまり競争力を高めることができるわけだ。

「このようにして価値をつくっていくことが、顧客創造につながっていくと考えています」(安藤氏)

機能や利便以外の付加価値で顧客を満足させる

安藤氏はさらに顧客体験価値について、マーケティング学者のバーンド・H・シュミット氏の考えを紹介した。それによれば、顧客体験価値を高める領域にはSENSE(感覚的価値)、FEEL(情緒的価値)、THINK(知的価値)、ACT(行動などに関わる価値)、RELATE(社会的経験価値)の5つがあるという。

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