2023年度は減収減益、制御機器・電子部品市場の減速が影響
オムロンは5月8日、2023年度(2023年4月~2024年3月)の決算概要を発表した。
それによると売上高は前年度比6.5%減の8188億円、営業利益は同65.9%減の343億円、税引前当期純利益は同64.5%減の350億円、同社株主に帰属する同期純利益は同89.0%減の81億円となったという。
また、事業セグメント別に見ると、制御機器事業(IAB)の売上高は同19.0%減の3936億円、営業利益は同75.0%減の215億円、ヘルスケア事業(HCB)の売上高は同5.3%増の1497億円、営業利益は同15.3%増の185億円、社会システム事業(SSD)の売上高は同32.0%増の1416億円、営業利益は同87.2%増の140億円、電子部品事業(DMB)の売上高は同17.6%減の1144億円、営業利益は同79.7%減の31億円と、ヘルスケアならびに社会システムで成長を果たしたものの、制御機器ならびに電子部品の減速により、全体としては減収減益を記録することとなった。また、純利益については、連結子会社化したJMDCの株式について追加取得時点の市場価格にて再評価を行ったことによる損失などが約120億円発生しており、その損失影響を除く同社株主に帰属する純利益としては同72.8%減の201億円になるとしている。
このJMDCについては、2023年12月21日付で、新たにデータソリューション事業本部を新設し、事業雪面ととしてデータソリューション事業(DSB)を追加。同社グループ既存のビジネスカンパニーとJMDCが協働する形で、データを軸に新たな価値を創造するソリューションビジネスへの進化を目指した取り組みが進められつつあるとしている。
減収減益の大きな要因となった制御機器事業について同社では、年間を通してグローバルで設備投資需要が低迷したことを原因として挙げている。中でも電気自動車(EV)向け二次電池や半導体関連の投資延期・縮小の影響が大きかったとするほか、販売代理店における在庫水準が高止まりしたことも影響したとしている。またもう1つの要因となった電子部品事業については、民生機器向け部品需要が、制御機器同様、顧客の投資抑制や生産活動の停滞の影響に伴う在庫調整などのあおりをうける形で、米州ならびに中国を中心に減少。自動車向け部品需要についても、下期に一部市場で自動車生産台数の増加がみられたものの、総じて低調に推移したことが影響したとしている。
2024年度は増収増益を見込むも、税引き前純利益は減益予想
2024年度(2025年3月期)について同社では、グローバルでのインフレや、欧州・ロシア、中東情勢など、地政学リスクが継続し、不透明な状況が続くとの見通しを示すが、年度後半から制御機器ならびに電子部品事業の緩やかな需要回復を見込むとしているほか、ヘルスケア事業は堅調な市場成長を期待、社会システム事業も事業環境としては好調が継続すると見ており、売上高については同0.8%増の8250億円、営業利益についても同42.7%増の490億円を見込むとしている。
ただし、2024年2月26日付で公表し、着手した構造改革プログラム「NEXT2025」において、収益成長基盤の再構築に取り組むことを掲げており、その中には2000人規模の人員削減計画も含まれていることから、その営業外費用として約280億円を見込んでいるため、税引き前純利益については同39.9%減の210億円に留まる見込みとしている。この構造改革関連費用については、最終的な退職者の数などにより大きく変動する可能性があるとしている。
事業セグメント別の見通しとしては、制御機器事業については第3四半期以降に半導体関連投資需要が日本ならびに韓国を中心に回復することが期待されるものの、ほかの業界における投資需要が緩やかに進むと見ているほか、販売代理店における在庫水準は上期中の正常化する見通しであり、売上高については同9.8%減の3550億円、営業利益については構造改革による売上総利益率の改善ならびに固定費の適正化を進めることで、同28.1%増の275億円を見込むとしている。
ヘルスケア事業については、グローバルで慢性疾患患者数の増加傾向が継続していることもあり、血圧計などの健康機器の需要が増加することを期待。グローバルにおけるオンラインチャネルでの販売強化ならびに新興国における需要拡大を進めることで、売上高は同7.5%増の1610億円、営業利益も同19.2%増の220億円を見込むとしている。
社会システム事業については、エネルギーソリューション事業にて、エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルに向けた取り組みが継続し、住宅・産業領域での再生可能エネルギーに対する需要が堅調に推移することが期待されるほか、駅務システム事業では、顧客の設備投資が引き続き堅調に推移すると見られることから、売上高は同9.1%増の1545億円、営業利益も同21.3%増の170億円を見込むとしている。
電子部品事業については、半導体関連業界向け需要が緩やかに回復することを期待する一方で、民生向け需要は顧客の在庫調整が続いており、正常化は第3四半期以降になることが想定されるため低調に推移すると見ており、売上高は同3.8%減の1100億円と減収を見込むも、営業利益については価格適正化や固定費削減を進めることで、同27.1%増の40億円を見込むとしている。
新設されたデータソリューション事業については、JMDCの事業が製薬企業を中心に医療データの利活用ニーズが拡大することを見込むとするほか、個人レベルの健康、予防意識の高まりを受けた保険者ならびに生活者向けサービス需要の拡大、ならびにJMDCの売上高が加算されることとなるため、売上高は前年度の174億円から430億円に、営業利益も前年度の22億円から30億円に増加することを見込んでいる。