NECの子会社でシリコンバレーで新事業の創出を推進するNEC Xは5月8日、警察署間の情報共有を円滑にするツールを提供し、迅速な犯罪解決を目指す米国のスタートアップMultitude Insightsへ出資したことを発表した。今回の出資は、同社が運営するベンチャースタジオプログラム「Elev X! Boost」の一環で、今後、Multitude Insightsの事業拡大に向けた支援を進めていく方針としている。
Elev X! Boostは、NEC Xが運営するベンチャースタジオプログラム。起業家が提案した顧客課題起点の事業アイデアとNECの技術をマッチングし、顧客発見・顧客実証などのプロセスを経て新会社立ち上げを推進する「Ignite」と、シードフェーズのスタートアップにNECの技術を提供することで製品を強化し、事業成長を支援する「Boost」の2つのパスが設けられている。
Multitude Insightsの概要
これまで米国の警察では、管轄区域を超えた情報共有や検索、連携のための効果的なツールを持たず、メーリングリストやファックスなどによる情報共有が一般的だったため、同一容疑者による犯罪であっても、管轄の異なる警察署間の捜査データを共有するための手続きに工数を要し、事件解決に時間がかかるという課題があったという。
Multitude Insightsは、警察署など法執行機関向けに、犯罪捜査などにおいて効率的な連携を促進するツール「BLTN」を提供している企業。
同社の提供するBLTNは、AIを活用して関連する犯罪の検索と分析を実施。警察署間や他の法執行機関などとのコミュニケーションを円滑にすることで、容疑者に関する情報の発信と速報の共有や追跡を可能にするサービス。
同サービスにより、情報の正確性の向上と、必要な手続きを履践した上での情報連携が可能となり、事件の解決率が上がるだけでなく、効率的な捜査と人件費の削減や犯罪の迅速な解決につながる。
同グループは、パブリックセーフティを支える基盤技術の研究開発およびソリューションの提供に取り組んできており、今後はBLTNの機能強化や事業拡大に向けた支援を進めるとともに、両社の事業シナジーを強化し、警察署間の連携促進による安全・安心な社会を実現したい構え。