国際宇宙ステーション(ISS)で6カ月半の滞在を終えた古川聡さん(60)が会見し、「民間の宇宙開発や、国際月探査の準備が進んでいると感じた」と振り返った。医師らしく、帰還後は自身の体調変化をX(旧ツイッター)に克明に投稿しており、会見でも「80歳になったらこうなると想像するくらい体のバランス、首や背骨、股関節の柔軟性が落ちた。宇宙が老化の加速モデルだと実感した」と語った。

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    会見する古川さん=米テキサス州(オンライン会見画面から)

古川さんは日本時間3月12日に地上に帰還後、米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センター(テキサス州)で重力に慣れるためのリハビリテーションを継続。会見を4月24日、オンライン中継で行った。

12年ぶり2回目となった今回の飛行では、前回のロシアの宇宙船「ソユーズ」ではなく米スペースX社の「クルードラゴン」で往復。「(日本実験棟)『きぼう』で企業が参加する実験に関わったことも含め、民間の宇宙開発の進展が印象的」と語った。水再生システムの実証などを通じ、月探査に向けた動きも実感したという。

ISSには筋肉の萎縮や骨量の減少を抑えるための運動機器があり、それらの効果があったと説明。一方、帰還直後の体調について「下を向くと気分が悪くなり、靴下を履けなかった。ボウリングの球ほど重い頭を支えることで、後頸部の筋肉が痛くて疲れてしまった。椅子に座る部分のお尻が痛かった。年を取ったためか、背骨や股関節は、(前回より)今回の方が著明に硬くなったと感じた」などと具体的に挙げた。リハビリを重ね、ほぼ飛行前の体調に戻ったという。

無重力で体液が上半身に多く供給されて起こる「体液シフト」による、身体の変化も説明。また宇宙特有の尿意や便意について「地上のように下にたまる感覚がなく、また感じた時は地上より蓄積していることが多い」などと解説した。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2022年11月、宇宙生活を地上で模擬する精神ストレスの研究で捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)などの不正が多数あったことを発表した。これを受け、実施責任者だった古川さんは今回、ISSで実験などの確認作業を強化した。古川さんは「実験や検証の手順書を読み込んで全体像をしっかり把握し、イメージトレーニングをした。疑問は迷わず管制官に尋ね、ダブルチェックも行った。カメラで(作業の)映像を地上の仲間に見てもらった。チームワークで仕事ができ、コミュニケーションが大切だと感じた」と総括した。

古川さんは日本時間昨年8月26日に地球を出発。ISS滞在中は次世代水再生システムの実証、微小重力での固体材料の燃え方を調べる実験の関連作業、撮影ロボットの実証、細胞が重力を感じる仕組みを探る実験、微小重力で臓器を作ることを目指す実験の関連作業、超小型衛星の放出などを進めた。今回の宇宙飛行は199日。通算では366日となり、若田光一さん(60)の504日に次ぎ日本人2番目の長さとなっている。

1964年、神奈川県生まれ。博士(医学)。消化器外科の臨床及び研究への従事を経て、99年に飛行士候補に選ばれた。2011年の初飛行では、ISSに5カ月半滞在。地上ではJAXAの宇宙医学生物学研究グループ長を歴任するなど、宇宙医学を推進してきた。

油井亀美也(ゆい・きみや)さん(54)、大西卓哉(たくや)さん(48)がそれぞれ、来年にもISSに長期滞在することが決まっている。油井さんは未発表ながら、米ボーイング社の新型船「スターライナー」本格運用初号機に搭乗するとの期待が高まっている。

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    日本実験棟「きぼう」で次世代水再生実証システムの水の試料を採取する古川さん=昨年9月(JAXA、NASA提供)

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