尿の通り道に詰まって激痛をもたらす結石を溶かす免疫細胞のマクロファージを、ヒトの血液細胞より生成されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくることに名古屋市立大学などのグループが成功した。患者が増えている尿路結石の予防薬や溶解を促す治療薬の探索に役立つと期待される。

尿路結石は腎臓内で形成された結石が、尿の通り道である尿管を詰まらせる病気で、背中などに強烈な痛みを起こす。結石の長径がおおむね1センチメートルまでならば、尿と一緒に自然に体外へ排出されるのを待つのが一般的な治療法で、大きい場合には衝撃波や内視鏡を用いて破砕することが多い。

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    尿路結石は腎臓や尿管、膀胱、尿道にできた結石。日本においては食生活の欧米化にともなって増加し、現在では国民の約10%がかかる病気となっている(名古屋市立大学の岡田淳志准教授提供)

再発率は5年で50~60%と高いが、効果的な予防法は約2000年前からずっと「十分な水分を摂取すること」とされる。新たな予防薬や再発リスクを減少させる手立てを必要とする人は多い。

名古屋市立大学大学院医学研究科の岡田淳志准教授(泌尿器科学)は、2007年にマウスを使った研究で尿路結石が自然に消える現象を発見している。09年から10年にかけては、マクロファージが結石を溶かすことが分かった。その後、炎症を引き起こして結石の形成を進めるとされるマクロファージとは別の型のM2型マクロファージが結石の予防に役立つことを明らかにした。ヒトの血液からマクロファージを多く取り出すのは難しいため、ヒトiPS細胞から大量のマクロファージを生成し、結石を溶かすことができないかを岡田朋記病院助教(同)と確かめた。

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    常在のマクロファージは生理活性物質であるサイトカインの影響で違う型に分化する。炎症を起こして結石形成を促進するとされるM1型マクロファージとは別のM2型マクロファージが結石を溶かす(岡田淳志准教授提供)

iPS細胞はヒトの血液細胞から生成し、約1ヶ月かけてマクロファージに分化させた。生理活性物質をつかって炎症性のM1型マクロファージと抗炎症性のM2型マクロファージに分化させ、尿路結石のおよそ8割を占める成分であるシュウ酸カルシウム一水和物を加えて観察すると、M2型は移動し、周囲の結晶を溶解した。溶解率は最大でM1型の5.6倍にのぼった。

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    M1型マクロファージ(上段)は移動せず、取り込んだ結晶(青い三角の先)は細胞の周辺から中心へと細胞内を移動した。M2型マクロファージ(下段、赤矢印の先)は移動し、通り道にあった結晶は消えた(岡田淳志准教授提供)

「ヒトiPS細胞からできたマクロファージを用いて結石を溶解する現象が世界で初めて実証された」と岡田准教授は話す。マクロファージそのものを培養して結石を溶かす薬剤にするのはコスト面から現実的ではないが、既存薬などから転用できるものを見つけ出す「ドラッグリポジショニング」を行う際に、結石の予防や溶解に有効な薬剤を見つけるために使えるとみられるという。

研究は四日市看護医療大学と行い、成果は科学誌ユゥロリシエイシスに3月30日に掲載された。

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