日本航空(JAL)と三菱重工業は5月7日、航空機の被雷予測を高精度に行うことができる被雷回避判断支援サービス「Lilac」の使用契約を4月2日に締結したことを発表した。4月から国内の空港を対象に同サービスの運用を開始している。
航空機の被雷は主に離着陸時に起こるという。冬の日本海沿岸では夏に比べて放電エネルギーが大きく、世界的に珍しい現象である冬季雷が発生することがあるが、気象レーダーに映りづらく雷雲の位置を特定するのが難しいことから、パイロットはより繊細な航空機の運航を余儀なくされていた。国内では航空機被雷が年間で数百件報告され、特に複合素材機であるボーイング787型機やエアバスA350型機は修理が複雑で時間がかかり、スケジュール遅延による経済的損失を含めると年間数億円規模の損失が発生しているという。
両社が2019年より開始した共同研究により、航空機が帯電した雲に近づくことで引き起こされる雷により被雷することが明らかになってきたことから、JAXAの被雷危険性予測技術の知見を得て、三菱重工が気象庁の配信する最新の観測データを基にAI予測モデルを独自開発し、共同研究を通じて飛行中に被雷の可能性が高い位置を高精度に予測できるようになったという。
離着陸時はパイロットの操縦操作が煩雑な時間帯のためWeb用の雷雲イメージを確認することが難しく、必要な情報を得ることが困難であったが、「誘発雷の可能性」の判別が容易なJALと三菱重工が特許技術を取得したアスキーアートレポートを地上運航従事者が機上のインターネット環境に依存しない、既存システムであるACARSを活用した通信を使用し送付することで、パイロットが必要かつ十分な情報をひと目で把握できる被雷予測を提供することが可能となった。
これにより、パイロットは飛行中でもコックピットから実際に見える雷雲と機上レーダー、アスキーアートレポートを重ね合わせて、到着経路にある発雷の可能性がある雷雲の有無を考慮した到着経路を選定することや、着陸する時間を見合わせることが可能になるとしている。