みずほ証券チーフマーケットエコノミスト・上野泰也の分析「内閣府世論調査で『現在の生活に不満』が初の50%超」

内閣府から3月8日、「国民生活に関する世論調査」が公表された(調査実施:2023年11月9日~12月17日)。今回の最大の特徴は、現在の生活に「不満」とした回答が初めて50%を超えたことである。

 設問「あなたは、全体として見ると、現在の生活にどの程度満足していますか」への回答分布は、「満足」(「満足している」7.2%と「まあ満足している」41.8%の合計)が49.0%(前年比▲2.8ポイント)、「不満」(「不満だ」14.5%と「やや不満だ」36.2%の合計)が50.7%(同+2.9ポイント)になった。

 この調査は2019年まで個別面接聴取法だったが、コロナ危機で20年は調査なし。21年からは郵送法で実施されており、手法変更から19年までのデータとの直接比較はできない。それでも、生活に「不満」を抱く人がついに過半数になった事実は重い。

 では、何が不満の原因なのか。この調査は、現在の生活の「各面での満足度」をたずねている。23年の調査で「不満」の増加が目立ったのは「所得・収入」「食生活」である。

「所得・収入」では、「満足」が31.4%(前年比▲3.5ポイント)にとどまる一方、「不満」は68.0%(同+3.2ポイント)に達した。賃金上昇が物価高に負けており、実質賃金がマイナスになっていることが、こうした回答分布に影響したと推測される。

「食生活」では、「満足」が66.7%(前年比▲5.0ポイント)と、まずまずの水準を維持したものの、「不満」が32.9%(同+4.8ポイント)に増加。物価高が続く中、食費を切り詰める努力をした世帯が少なくなかったことが影響したのだろう。

 この間、コロナ禍の終息を背景に、「レジャー・余暇生活」では「不満」が減少した。

 調査方法の郵送への変更前から観察されていた傾向だが、現在の生活への満足度が相対的に高いのは若年層。そして、公表資料の性・年齢区分別データで「満足」が6割を唯一超えたカテゴリーは「18~29歳・女性」である。

 これに関しては、さまざまな考えを抱く向きがあろう。政府の後押しで「女性活用」が推進される中、この年齢層を中心に、自らが望むキャリアプランを女性は実現しやすくなっている。一方で、結婚・出産に束縛されない自由な人生を若い女性が設計する余地は、以前に比べるとかなり広がっている。「推し活」に多大な時間とお金をかけて充実感を得ている独身女性は珍しくない。

 これに対し、満足度が最も低いのは40~49歳。「満足」が45.0%にとどまる一方、「不満」が55.0%に達した。住宅ローン返済や教育費の負担が重いのだろうか。

 国民の意識に関するこうした世論調査の結果は、日本経済の先行きを見ていく上で、あるいは妥当な政策を考えていく上で、示唆に富む。