【農林水産省】最新鋭の捕鯨母船が完成 国産は73年ぶり

最新鋭の設備を配した新捕鯨母船「関鯨丸」が完成し、船主である共同船舶によって山口県下関市で報道陣に公開された。調査捕鯨の時代に活躍し、昨年引退した「日新丸」の後継となり、国産捕鯨母船の建造は73年ぶり。国内の鯨肉消費が盛り上がりを欠く中、捕鯨業者は捕獲対象にできる新たな鯨種の追加に期待を託す。

 約75億円の建造費を投じた関鯨丸は、総重量約9300トン、全長112.6メートル、環境配慮のため電気推進システムを採用し、南極海にも到達できるという。鯨を探索するためのドローンデッキも設置。ナガスクジラなど、70トン級の大型鯨類にも対応できるようにした。5月下旬に出港し、日本の排他的経済水域(EEZ)内で操業、年末に下関に帰港する予定だ。

 水産庁は今年中に、捕獲対象としている大型鯨類3種類に新たな種類を追加し、捕鯨業者を後方支援する考えだ。

 共同船舶は2022年度に商業捕鯨再開後で初めて黒字化したものの、政府は年間51億円の捕鯨対策予算を組んでおり、産業として自立するには至っていない。共同船舶の所英樹社長は記者会見で、今年の操業について「新鯨種の追加がないと確実に赤字」と明かした。

 日本が19年に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨を再開してから間もなく5年となるが、捕鯨業に対する国際世論は厳しさを増す。1962年度には約23万トンが消費され、日本人の貴重なタンパク源となった鯨肉だが、食卓を離れて久しい今では年間約2000トンの消費量にとどまる。

 坂本哲志農林水産相は記者会見で「商業捕鯨が安定的な軌道に乗ることができるよう、地方自治体、研究者、捕鯨業者らと連携して、鯨肉の消費拡大など必要な対応に取り組んでいきたい」と強調した。

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