NECは4月26日、2024年3月期における決算説明会を開催した。説明会には、同社 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏が登壇し、2023年度の決算概要および2024年度の業績予想と2025中期経営計画の進捗状況を説明した。

すべての指標で全社目標値を達成

最初に森田氏は、2023年度の実績サマリとして「すべての指標で全社目標値を達成した」と説明した。特に売上収益に関しては、前年度比5%増の3兆4773億円を達成し、前年度比で増収となっている。

また調整後営業利益は前年度比180億円増の2236億円、Non-GAAP営業利益(年間)は同306億円増の2276億円となっており、要因について森田氏は2022年度「知財収益」「テレコムサービスの一過性要因」「オペレーション領域の改善」を挙げている。

  • NECの2023年度の実績を語る森田氏

    NECの2023年度の実績を語る森田氏

2023年度の実績をセグメント別に見てみると、「ITサービス」「社会インフラ」共に増収しており、特にITサービス領域においては国内の企業向け・官公庁向けのサービスの売上収益が好調に推移しているという。

「国内のITサービスに関して、売上収益が前年比10.2%増の1兆6137億円、調整後営業利益が396億円増の1893億円と高成長を遂げています」(森田氏)

  • ITサービスの売上収益および調整後営業利益

    ITサービスの売上収益および調整後営業利益

一方の社会インフラに関しては、テレコムサービスのグローバル5Gに関して一過性の費用計上により減益しているものの、ANS(Aerospace and National Security)は、政府予算増に伴う案件獲得により年間で5000億円超を受注、売り上げや調整後営業利益も好調に継続しているという。

2025年度には3兆5000億円の達成を目指す

続いて森田氏は、2024年度の業績予想と2025中期経営計画の進捗状況を説明した。売上収益に関して、2024年度は前年度比3.1%減の3兆3700億円を予想、2025年度には3兆5000億円の達成を目指す方針だという。特にITサービス領域に関しては、2025年度に2兆円を達成することを目標としている。

「国内のITサービスに関しては、2025年に向けて高水準であった2023年度からさらなる成長を計画しています。また海外に関しては、Avaloq(NECが買収したスイスの大手金融ソフトウェア企業)での利益成長を織り込んでいます」(森田氏)

  • ITサービスの売上収益予想

    ITサービスの売上収益予想

社会インフラについての売上収益は、ANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を狙う。調整後営業利益は、テレコムサービスでのグローバル5Gの改善と23年度の一過性費用の剥落により増益を計画している。

また森田氏は2024年度の予想として、成長事業である「コアDX」「DG/DF(デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)」「グローバル5G」の3点について、以下のような成果と課題があることを述べた。

コアDX

成果
初期基盤投資の一巡により収益性が改善、コンサル起点ビジネスの計画的な成長

課題
オファリング売上比率の拡大による収益性向上

DG/DF(デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)

成果
事業基盤を再構築(ボルトオンM&A、ノンコア事業売却)

課題
収益性の高いソフトウェアおよびSaaS比率の向上、さらなるオフショア拡大やコスト削減による収益性改善

グローバル5G

成果
海外市場での構造改革の実施による損益改善

課題
ソフトウェアを中心とした高付加価値事業へシフト、海外市場における販売・開発体制のもう一段の最適化

一方、「2025中期経営計画」をスタートした2021年度に開始された低収益事業の収益改善活動についての進捗についても森田氏は説明した。

この取り組みでは、CFO(最高財務責任者)主導でモニタリングを行い、2年連続で営業利益率7%を超えたものが低収益事業から「卒業」する仕組み。その一方で、収益性改善が難しい領域は、売却やパートナーリングなどにより事業価値を最大化するための見極めを行っている。

「2020年度末で16個あった低収益事業の中から、2022年度に4事業、2023年度は5事業が高中収益事業に転換して卒業しました。2024年度は消防防災と中堅中小ビジネスに関する2事業の計3事業で収益改善を見込んでおり、2025年度末までに高中収益へとシフトすべく活動を継続していきます」(森田氏)

  • 低収益事業の収益改善活動について

    低収益事業の収益改善活動について

NECの注力事業「生成AI」

最後に森田氏は、同社の注力事項である「生成AI」に関するトピックスを説明した。

同社では、顧客のビジネスに最適な生成AIの利用環境を提供するため、LLM(大規模言語モデル)と顧客向けサービス提供のラインアップの拡充に注力しているという。

その中で、NECグループ約4万人の膨大な対話履歴を学習させることにより、世界トップレベル性能の高速なLLMである「cotomi Pro/cotomi Light」を開発した。

またパブリッククラウドに加えて、オンプレミスでの提供を開始し、顧客ニーズにあわせた柔軟な提供形態の実現を目指しており、業種に特化したサービスの第1弾として、生成AIを搭載した電子カルテシステム「MegaOak/iS」を販売開始している。

MegaOak/iSは、LLMを用いた医療機関向け生成AIで、電子カルテに記載の診療情報をもとに診療情報提供書(紹介状)と退院サマリに活用できる文章案を自動生成する機能を有しているものだ。

加えて森田氏は、相模原市にて自治体向けで初となる生成AI「cotomi」の業務活用が開始されたことにも触れ、今後の同社の生成AIに関するますますの期待感を述べていた。