ロケットリンクテクノロジーは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)発のベンチャー企業である。その代表を務めるのは、イプシロンロケットの開発を主導してきた森田泰弘氏。SPEXAのブースでは、同社が研究開発を進める「LTP」(低融点熱可塑性推進薬)や、それを搭載するロケットなどが紹介されていた。
同社のキー技術である“LTP”とは何か。これは、“Low melting temperature Thermo-elastic Propellant”を略したもので、Lが「低融点、」Tが「熱可塑性」、Pが「推進薬」を意味する。LTPを使うことで、低コストで使いやすい固体ロケットが実現できるという。
現在ロケットで使われている固体推進薬は、硬化剤を入れて化学的に固めているため、一度固まったら、もうやり直すことはできない。それに対しLTPは、固まった後でも、熱を加えると溶けて、再び固めることができる(=熱可塑性)。チョコレートのようなもの、とイメージすると分かりやすいだろう。
このメリットは非常に大きい。従来は一気に作るしかなかったため、それだけの大きさの設備が必要となったが、LTPは一旦作り置きし、充填するときにまた溶かして固めるという方法が使えるので、町工場のような小規模な設備でも構わない。充填後にクラックなどの問題が見つかっても、やり直しが可能だ。
ブースでは、協力企業として、植松電機とシンキーが名を連ねる。LTP製造時の撹拌には、シンキーの自転・公転ミキサーを使用。これは、材料を入れる容器が惑星のような自転と公転の動きで高速回転し、その遠心力で撹拌するという装置。撹拌と同時に、混ざっていた空気も抜けるというメリットがある。
植松電機は、ロケットの製造や打ち上げなど、活動を全体的にサポートしてきた。会社の敷地内に、LTPを製造できる施設を新たに建設するなど、LTPの研究開発にも協力している。
LTPの打ち上げ試験は、これまでに3回実施。2018年の1号機「LTP-040」は高度100m級、2019年の2号機「LTP-060」は高度1km級と、徐々に大型化を進め、そして2024年3月17日には、3号機「LTP-135s」の高度5kmの打ち上げに成功した。なおロケットの型番については、JAXAの「S-520」などと同様に、機体の直径(mm)を表すという。
今後、さらなる大型化を進め、2025年夏ころには、全長5.2mの「LTP-210」で高度100kmの宇宙空間到達を目指すという。射場は北海道スペースポート(HOSPO)のほか、ASTROCEANの洋上発射施設も想定しているとのこと。
さらに、軌道投入ロケット「LTP-L」の開発計画もある。同ロケットは、全長20m、直径1.5m。固体3段+液体最上段という構成になり、高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に200kgの打ち上げ能力を持つ。価格は5億円という安さで、森田氏によれば、2027年くらいに実現したいということだ。