「日本版ライドシェア」スタート 全面解禁には慎重の声も

タクシー会社以外の参入を議論

「日本版ライドシェア」が動き出した。タクシーが不足する地域で時間帯を限って一般のドライバーが有償で乗客を運ぶ。

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 事業者側の反応は様々だ。あるタクシー会社幹部は「ドライバーの研修を行い、安全確保を徹底し、ドライバーの指導にはこれまで培ってきたノウハウを生かしたい」と語り、配車システムを提供する首脳は「多くの企業がタクシービジネスへの参入を検討している」と話す。

 日本版ライドシェアは海外で言われるライドシェアとは異なり、前述の制限に加えてタクシー会社が運行を管理し、タクシー会社がドライバーの教育や勤務管理を行う。ドライバーにとっては新たな副業の選択肢にもなる。6月には海外では導入されている〝タクシー会社以外の参入〟も検討される。

 ただ、全面解禁には慎重意見も出ている。国内最大手の第一交通産業社長の田中亮一郎氏は「タクシーの規制緩和で、できることはたくさんある」と指摘する。例えば、タクシーは自由に営業ができるわけではなく、「営業区域」と呼ばれる指定された区域内のみに限定されている。その区域数は600を超える。A区域でタクシーが余り、隣のB区域でタクシーが足りないケースがあってもA区域から応援などには行けないのが現状だ。

 他にも営業所は土地や建物の占有が原則となっており、公民館や病院などを活用できないなど、既存のタクシー業界にまつわる規制緩和の議論も求められる。ただ、「岸田文雄首相が『ゴー』といえば全面解禁が実現してしまう雰囲気だ」(タクシー会社首脳)。

 人手不足の中で、乗客が便利になることはもちろんのこと、安全の担保や責任の所在の明確化など折り合いをどうつけていくか。解決すべき課題は多い。