ANAなどが神津島でタッグ 擬似体験で観光需要創出へ

新たな地方創生の取り組みが生まれている。その舞台は東京・神津島だ。人口が1800人ほどの離島でANAグループとNTT東日本、テレビ朝日が〝スクラム〟を組んでいる。

〈90周年を迎えた中堅ゼネコン〉ナカノフドー建設社長・飯塚隆の「誠意・熱意・創意の『三意主義』で新たな需要開拓を!」

「来てもらえば、知ってもらえば、わかる魅力がある。そこには自信がある」─。こう語るのは神津島村村長の前田弘氏。神津島はダイビングや釣り、海水浴などが人気で、国内で2番目となるNPO法人の国際ダークスカイ協会が認定する「星空保護区」に認定されている。

 昭和40年代の離島ブーム時、神津島には年間10万人の観光客が来島していたが、コロナ禍前の観光客数は「年間で約4万5000人から5万人」(前田氏)にまで落ち込んでいた。そんな中で同島と連携していたNTT東日本が仲介役を担い、ANAグループとテレビ朝日が同島の活性化に乗り出した。

 メタバースのバーチャル旅行プラットフォームを手掛けるANA NEOが観光地に神津島を追加。秋・冬のベストスポットをバーチャル上に再現し、航空機で神津島空港に降り立ち、天上山でのハイキングや名組湾で美しい夕陽を眺めるといったコースを自分のアバターで体験できる空間を作り出した。

 また、移動でポイント・マイルを貯めることができるアプリケーションを展開するANA Xは神津島の観光情報などをまとめた観光アプリを提供。テレビ朝日は星空好きなどが参加する共創型コミュニティを構築。デジタルやリアルなコミュニティイベントなどを開催する。

 興味深いのは神津島が「ANA未就航地」である点。自社の飛行機が飛んでいなくても、デジタル技術を駆使すれば観光地の活性化ができることを示したいとANAグループは考えている。日本には400の離島があるため、神津島での成功モデルを横展開できるからだ。

「島はミネラルアイランド」(東海汽船首脳)と位置付けられるなど、身も心も休まる場所と言われる。デジタル空間での擬似体験を通じて、インバウンドも含め、新たな地方創生の枠組みをつくれるかどうかがポイントになる。