海外パビリオンの約3分の1でまだ建設業者も決まっていない
「自治体も、経済界も、政府も、関係者が一丸となって、オールジャパンで準備を進め、必ずや成功に導いていく」
開幕まで、あと1年を切った「大阪・関西万博」。岸田文雄首相はこのように述べ、万博が関西経済の新たな起爆剤となるよう宣言した。
大阪・関西万博は2025年4月から10月までの約半年間、大阪・夢洲(ゆめしま)で開催。来場者は約2820万人、経済効果2兆9000億円を見込む。人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造・発信する場となる予定だ。
関西経済連合会会長の松本正義氏も「大事なことは理念。今回のコンセプトにあるように『未来社会の実験場』として、課題解決型の提案ができるような万博にしたい」と意気込む。
ただ、一部パビリオンの建設遅れやコスト負担増、前売り券販売の伸び悩みなど、課題は山積している。
特に深刻な状況となっているのが海外パビリオン。161の国と地域が参加する予定のパビリオンは約50カ国が自前で建設する予定だが、その約3分の1は建設業者も決まっておらず、着工の見通しが立たない。
また、建設現場の「2024年問題」に対応するため、残業時間の規制による労働力不足や工事の遅れも懸念される。すでに資材価格や人件費の高騰が要因で、会場建設費は当初の1250億円から2倍近い2350億円に増額。国と大阪府・市、産業界で3分の1ずつを負担する予定だが、赤字に終わった場合、誰が補填するかは決まっていない。
2021年の東京オリンピック・パラリンピックでも指摘されたのは、司令塔が誰かということ。五輪でも国や東京都、日本オリンピック委員会(JOC)などの責任の所在は曖昧なままだった。
今回の万博開催も、真の司令塔は誰なのか。大阪府・市なのか? 日本国際博覧会協会(万博協会)なのか? 国なのか? これ以上の進行の遅れや責任の擦り付けはあってはならない。