TSMCが4月18日、2024年第1四半期決算説明会を開催。同社のC.C. Wei最高経営責任者(CEO)が機関投資家らと交わした質疑応答から、同社の今後の戦略の一端が垣間見えた。

地震による損害は30億NTドル規模

台湾では4月3日、花蓮地震が発生し、TSMCの台湾にあるすべてのファブでも地震を感知して、一時操業を停止。各拠点での最大震度は5で、過去四半世紀で最大の規模であったが、従業員や関係者の尽力により製造装置は地震発生後10時間以内に7割以上(最先端ファブに限れば8割以上)が復旧し、発生3日目の夜までに完全復旧を果たした。建屋も構造的な損傷はなく、EUV露光装置を含む重要装置にも被害は確認されなかったという。ただし、緊急停止に伴い、仕掛中のウェハや材料の一部を廃棄する必要が生じたとしつつ、この生産量の大部分が第2四半期中に回復できる見込みで、同四半期の業績への影響は最小限に留まる見込み(売上総利益率の約0.5%低下)としている。

また、決算説明会の終了後となるが、保険金控除後の地震関連損失の概算見積もりが約30億NTドル(9200万ドル)となることも明らかにしており、同四半期の損失として計上予定としている。

需要のけん引はAI関連、車載・スマホ・PCは鈍化

TSMCはこの決算発表に際し、2024年の半導体市場全体の見通しを下方修正しているが、その分析内容として、データセンターを中心とするAI関連の需要は強いとする一方で、従来型のサーバ需要は少なく、またスマートフォン(スマホ)需要は徐々に増加しているが急回復は見込めないこと、ならびにPCも底を打ったものの回復が遅れていることを指摘。自動車も前回見通しでは2024年は伸びると見ていたが、これまでの状況から前年割れの可能性もあることから、全体的な傾向として下方修正を行ったとする。

成熟プロセスは特殊プロセスに期待

同社の売り上げの多くが7nm以下の先端プロセスによるものとなり、12nm以上の成熟プロセスの売り上げ比率はそこまで高くない。この点について、これら成熟プロセスの需要は依然として低迷していることを認めつつ、売り上げ拡大に向けて同社では、戦略的顧客と緊密に連携して特殊プロセスの開発を通して、差別化された長期的な価値の創造を図っていくとしている。これによって、中国を中心とする競合ファウンドリによる過剰な生産能力による価格競争をできる限り避け、利益を確保していきたいとしている。

一方の先端プロセスについては、現在のAI半導体のほとんどが5nmならびにその改良版となる4nmを採用をしているが、そうした顧客の多くが次世代プロセスの活用を期待しており、すでに協力関係を構築していることを強調。2nmプロセスについてはAI関連からの需要に加え、スマホからの需要も加味し、これまでよりも需要が多く、長く使い続けられる技術プロセスになるとの見方を示している。

このほか、米アリゾナ州での取り組みについては、AmkorがTSMCの拠点近くに先端パッケージング工場を建設する計画を進めていることから、TSMCとしてもAmkorと提携して、アリゾナ工場を活用する顧客の需要に応じる形でのサポートができるようにしていきたいとしている。