物流業界をとりまく2024年問題の解決に向けた自動倉庫システム「AutoStore」

自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」を手掛けるノルウェーのAutoStoreと同社の日本における正規販売店であるオカムラは、日本の物流業界における自動化の推進に向けて現在の物流業界の課題と、その解決に向けた同社の事業戦略についての説明会を開催した。

  • 自動倉庫システム「オートストア」のデモ機

    自動倉庫システム「オートストア」のデモ機

オートストアは、これまでは人が棚に配置されていた在庫を通路を歩いてピッキングを行っていた作業を効率化することを目指して生み出されたソリューション。倉庫を棚の代わりに格子状に組まれたグリッドとし、「ビン」と呼ばれる専用コンテナを隙間なく格納。その上段をピッキング情報を取得したピッキングロボットが縦横無尽に走行し、目的のビンをピックアップ、作業者の待つポート(荷物の受け取り口)へビンを搬送するという仕組みの高密度自動倉庫システム。縦に長い造りのため、従来ある平らな倉庫よりも省スペース化を図ることができ、あらゆるユーザー条件にあわせた設置・運用が可能だとする。

  • 急速充電可能な日本製LTOバッテリを搭載したロボット「R5 Pro」

    急速充電可能な日本製LTOバッテリを搭載したロボット「R5 Pro」

日本の物流業界では「2024年問題」が喫緊の課題とされており、その解決策として同社では「リードタイムの短縮」と「荷待ち時間の短縮」が必要であるとし、オートストアがそうした課題を解決できるポテンシャルがあることを強調する。

最近でも青森県の宮下宗一郎知事による「特産品のリンゴを1日で東京に運べなくなる」との指摘が話題になったが、トラックドライバーの時間外労働の上限が規制されることで、現状では1日で運べていたリードタイムが、2~3日かかるようになる場合もでてくる。

  • このままでは現状のリードタイムでは荷物を運べなくなる可能性がある

    このままでは現状のリードタイムでは荷物を運べなくなる可能性がある

そこで、同社ではハブ拠点とは別に地域拠点としてオートストアを設置、在庫をもたせることで、リードタイムを短縮できるとしている。高密度収納のため、平置き棚よりも少ない面積で設置でき、少ない人数でオペレーションも可能のため、「保管スペースの確保」や「ピッキング作業者の確保」などの障壁も少ないとした。

また、荷待ち時間の発生要因として、スペース不足による作業遅れや荷造り作業の遅れなどが挙げられることから、外部倉庫用のトラックバースも有効活用しながら、保管スペースを高密度収納のオートストアで集約することで、2024年問題の壁を超えることができるのではないかと提案した。

日本の物流業界を取り巻く課題解決に挑むオートストア

現在欧米では、物流ロボットの導入が加速しているという。その理由は、インフレと人件費の高騰が進んでおり、欧米諸国では設備投資回収期間が1~3年となっている状況とのこと。倉庫にかかる費用のうち25%~58%が人件費であり、欧米諸国にとっては人件費の増加と設備投資回収期間の短縮で、自動化を進めない方がリスクが高まるという認識になっていることから、自動化・省人化ロボットの導入が急加速している実態があるという。

  • 欧米諸国では、人件費の増加と設備投資回収期間の短縮により、自動化を進めない方がリスクが高まるという認識になっている

    欧米諸国では、人件費の増加と設備投資回収期間の短縮により、自動化を進めない方がリスクが高まるという認識になっている

一方、日本では倉庫業務の人件費は東京湾岸エリアでも時給換算で1400円前後(約9.3ドル、1ドル150円換算)であり、自動化に対する意識は欧米と比べて弱い傾向にあるという。

しかし、日本でも庫内作業スタッフの人手不足が深刻化してきているほか、コロナ禍を経て長時間労働を避ける作業者もでてきており、週5日8時間勤務を望まない作業者も増加傾向にあり、これらは「隠れ2024年問題」とも言えると指摘する。また、1時間あたりのピッキング量が1万行レベルを超える案件が増加しつつある背景もあり、倉庫内作業の自動化の需要は高まりつつあるという。

  • 三大都市圏の人件費の推移

    三大都市圏の人件費の推移。コロナ禍を経て週5日8時間勤務しない倉庫作業者の数が増加し、オペレーションはシフトのやりくりに苦慮しているという

その例として、オートストアの属するバケット用自動倉庫カテゴリーの日本市場規模は2013年には395億円だったものが、2022年には820億円に達しており、今後も成長が期待できることから物流業や製造業を中心に積極的にオートストアの導入を押し進めていきたいとの意向を示した。

また、コロナ禍を経て冷凍食品の需要の高まりもあり、冷凍倉庫が増加していることを踏まえ、2025年以降、冷凍倉庫に対応した自動倉庫システムのソリューションを展開していきたいともしている。ただし、具体的な展開手法などについてはまだ何も決まっていないとしながらも、すでにノルウェーでは案件が進行中であるとのことで、日本でも実証実験的な導入を続けていくことで、性能の向上を図っていきたいとしていた。