アストロスケールは4月22日、2024年2月より進めている商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」のミッションにおいて、対象デブリの後方数百mの距離にまで接近することに成功したと発表した。
スペースデブリは、主に運用を修了した衛星やロケットなど、自力で軌道変更などができない非協力物体であり、破片などの場合もあるため外形や寸法などの情報が限られたり、地上との通信もできないため位置情報や姿勢の状況なども不透明な状態のものが多い。そうしたデブリを除去するためには、その劣化状況や回転状況など、軌道上での状態を把握しつつ、対象のデブリに安全かつ確実にRPO(ランデブ・近傍運用)を行うことが求められている。ADRAS-Jは、そうしたデブリに安全に手を伸ばせば届く距離まで接近し、対象デブリの周回観測などを行うことを目指した実証衛星となっている。
今回のミッションで対象としているデブリはGOSATを打ち上げた「H-IIAロケット15号機」の上段で、全長約11m、直径約4m、重量約3トンの大型デブリ。ミッションでは、接近・近傍運用を実証し、長期間軌道上に存在するデブリの運動や損傷・劣化状況の撮像に挑む予定となっている。
対象デブリへの接近は2月22日より開始、GPSと地上からの観測値という絶対的な情報を用いた絶対航法によりデブリと同じ軌道へと調節し、デブリ後方数百kmの位置まで進めた後、4月9日にADRAS-J搭載のVisCam(可視光カメラ)でのデブリ捕捉に成功。以降、衛星搭載センサを活用してデブリの方角情報を用いる相対航法(AON)に移行して距離を詰めていき、デブリの後方数kmの距離において搭載のIRCam(赤外カメラ)でのデブリ捕捉に成功。4月16日には、IRCamによって取得するデブリの形や姿勢などの情報を用いる相対航法(MMN)を開始し、4月17日にデブリの後方数百mまで接近することに成功したという。
なお、アストロスケールでは、手を伸ばせば届くレベルまで距離を詰めていくことを目指しており、今後も安全性を確認しながらさらなる接近に向けた運用を進め、デブリの状態や動きを把握するための撮影に挑みたいとしている。