トヨタがモビリティカンパニーの実現に向けて品川に本社を移転

トヨタ自動車が新東京本社を開業する。場所は品川だ。2029年度に開業する新たな東京本社はカーボンニュートラルなどの取り組みを進める重要な拠点の1つとして、ソフトウエア開発機能の配置や実証に必要な設備の導入などを計画している。

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 同社は「オフィス内にはモビリティ実機の持ち込みを可能にするなど多様な人材が活躍できる環境づくりを目指す」とする。

 移転先は品川駅西口で複合商業施設「SHINAGAWA GOOS(シナガワ グース)」の跡地にできる地下4階、地上29階のビル内。同ビルにはオフィスや高級ホテル、商業などを整備する計画となっており、25年度に着工し、29年度に開業を予定する。

 トヨタは京浜急行電鉄と共同で再開発を進める。京急は20年から共同事業者として参画しているトヨタに土地持ち分の一部を譲渡。京急の譲渡益は約850億円となる予定で、開発にかかる資金はトヨタへの土地譲渡資金を充当し、残りは負債で調達する予定だとしている。総事業費は約2400億円。

 トヨタの水道橋の東京本社ビルの今後の活用方法は未定だが、コロナ禍による出社率の減少などを踏まえ、昨年にはトヨタ不動産に売却。所有者が不動産を売却した後に賃借する「リースバック」で一部はトヨタが利用し、残りは日本サッカー協会が利用。トヨタは当初、26年度の開業を検討していたが、都市計画の手続きや関係各所との協議に時間がかかり、想定より3年先延ばしになっていた。

 品川は新幹線や羽田・成田両空港とのアクセスが便利であることに加え、27年度の開業が延期となったが、名古屋駅を結ぶリニア中央新幹線の開通も予定される。都市機能の向上が期待される品川駅の至近に本社を構えることで、かねてよりトヨタが強調していた「クルマが社会とつながり、新たな価値を生み出す『モビリティカンパニー』の実現」(幹部)が期待される。

 時価総額が60兆円を超え業績好調が続く一方、グループ会社の不正対策に追われる、まだら模様の中での本社移転となる。