ソラコムは4月22日、上場企業のIoT(Internet of Things)プロジェクトに関わる組織・人数や、目的、推進する上での課題について、この3年間での変化を調査した「2024年版 IoTプロジェクトの成功と推進の課題に関する実態調査」の結果を発表した。約6割の上場企業がIoTプロジェクトに成功したと実感している一方で、IoT特有の技術に関する専門知識を持つ人材の育成や組織作りが課題となっていることもわかった。
同調査結果は、現在または直近3年以内に何らかのIoTを活用するための「IoTプロジェクト」(PoCのみも含む)に関わったことがあると回答した上場企業の経営者、役員、会社員158人に対し、1月25日~1月27日に実施したIoTプロジェクトの成功と推進の課題に関する実態調査の結果に基づくもの。
データを事業成長へ活用する取り組みにシフト
IoTプロジェクトがうまくいった(うまくいっている)と思うかどうか尋ねると、63.3%が「はい」と回答し、上場企業の6割以上がIoTプロジェクトに成功実感を得ていた。
IoTプロジェクトが開始されたきっかけは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)やデジタル活用の専門部署からの指示」が44.9%で最多。約9割のプロジェクトが経営層や他部署からの指示によって開始されており、ボトムアップで開始するケースは1割に満たないことが明らかになった。
難航企業の回答に着目すると、「情報システム部からの指示」の割合が成功企業よりも21.5ポイント高い。一方の成功企業は難航企業に比べ「経営層からの指示」、「現場からの要望」が高く、プロジェクト成功の要素として、経営層のコミットメントや現場主導のスモールスタートが重要である可能性が示唆される結果となった。
「2021年1月~2022年12月の間に着手したプロジェクト」と「2023年以降に着手したプロジェクト」で、それぞれの期間におけるIoTプロジェクトの目的を聞いたところ、3年前は、「効率化・業務改善」(27.8%)、「オペレーションの全体最適化」(24.1%)、「人材育成・組織強化」(22.8%)がトップ3だった。
しかし、2023年以降に着手したプロジェクトのトップ3は、「オペレーションの全体最適化」(24.7%)、「データに基づく経営の意思決定」(22.8%)、「効率化・業務改善」(22.2%)となり、データを事業成長や付加価値向上へ活用しようとする取り組みにシフトしていることが分かった。
8割弱の企業が社内から人材をアサインする「自前主義」
IoTプロジェクトを進める上での課題については、「専門人材の育成」(26.6%)、「ベンダーコントロールがむずかしい」(25.3%)、「IoTシステム開発の全体像がわからない」(23.4%)が全体の回答トップ3となった。
難航企業の回答では、「IoTシステム開発の全体像がわからない」が34.2%と最も高く、成功企業に比べ12.2ポイント高い。ほかにも、「センサやデバイスの選び方が分からない」「モノからデータを取得する方法が分からない」など、ハードウェアや通信の技術で難しさを感じていることが分かった。
IoTプロジェクト実施時、回答者の77.9%が当該部門と他部署メンバーなど社内人材のみで構成されたチームでスタートしたと回答し、外部の専門家やベンダーなどのリソースを活用しているプロジェクトチームは合計22.2%にとどまった。外部リソースの活用は少数派で、8割弱の企業が社内から人材をアサインする「自前主義」であることが分かる。
今回の調査から、約6割の上場企業がIoTプロジェクトに成功したと実感していることが分かった。プロジェクトメンバーが増加傾向にあることや、目的もデータ活用にシフトしつつあるが、IoT特有の技術に関する専門知識を持つ人材の育成や組織作りが課題となっていることも浮き彫りになる結果となっている。