労働団体の連合が4月4日に発表した2024年春闘の第3回回答集計結果で、全体の賃上げ 率は平均で5.24%と33年ぶりの高水準となった。大企業を中心に人材確保を目的とした初任給引き上げの動きが相次いでいる。一方で、中小企業からは賃上げに対する厳しい声があがっている状況だ。
2024年度の賃上げ、3社に2社は「賃上げ率5%」に届かず
帝国データバンクは4月18日、新年度の賃上げの実績および新入社員の初任給について、1050社の企業を対象に実施したアンケート調査の結果を発表。これによると、賃上げをした(もしくはする)と回答した企業は77%で、3社に2社は「賃上げ率5%」に届いていなかった。「3%増加」とした企業が22.0%でトップとなり、「5%増加」(15.0%)、「2%増加」(12.4%)が続いた。一方で据え置きは16.6%、賃下げは0.6%だった。
企業の規模別にみてみると、賃上げをした企業の割合は大企業が77.7%、中小企業とが77.0%でほぼ同水準となった。一方で、小規模企業は 65.2%と全体(77.0%)を11.8ポイント下回る結果となった。賃上げを行う企業からは「従業員のモチベーションアップや人材確保のためにもさらなる賃上げは必要」といった声が上がった。
難しくなる新卒採用、3社に1社が「初任給20万円未満」
2024年度入社における新卒社員の採用状況と初任給についてはどうだろうか。アンケート結果によると、新卒社員を採用した企業は45.3%、採用しなかった企業は53.1%だった。規模別にみてみると、採用ありと回答した大企業は76.2%だった一方で、中小企業は40.9%、小規模企業は23.7%となり、全体(45.3%)を下回った。
中途採用しか行っていない企業が複数みられるほか、「2024年4月入社は募集したが応募がなかったため、来年度を見据えて賃金の底上げを図った」(建設業)との声にあるように、採用活動を行ったものの人材を獲得できなかった企業もあったとしている。
また、新卒社員の採用がある企業に対して、初任給の金額を聞いたことろ、「20~24万円」が57.4%でトップ、次いで「15~19万円」が33.3%で続いた。初任給が20万円未満の企業の割合は35.2%と、3社に1社となった。
「新卒社員の獲得のため初任給を引き上げる」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった声が聞かれた一方で、「求人市況を考えると、初任給を含め、賃金の増額は必須と考えているが、仕入れ価格の高騰に対し販売価格がとても追いつかず、特に中小企業の経営は苦しい」(機械製造)のように、初任給など賃金を引き上げたいが、経営状況により諦めざるを得ない企業もあったとのことだ。
帝国データバンクはアンケート結果を受け、「日本の法人企業のうち多数を占める中小企業の賃上げが進まなければ、この好循環、そして景気回復の実現は難しいほか、中小企業における人手不足問題の深刻度は増す恐れがある」と警鐘を鳴らしている。