体に必要な成分が再吸収できなくなる「ファンコニー症候群」とみられる所見が小林製薬(大阪市)の紅麹(こうじ)サプリメント摂取後に腎障害が出た人に多数みられていたことが、日本腎臓学会(南学正臣理事長)の調査で明らかになった。サプリの成分が腎臓に集積し「尿細管」が傷ついたためと考えられるという。同学会は詳しい調査データを公開し、全国の医療機関医師らの参考にしてほしいとしている。

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    腎臓のイメージ画像(日本腎臓学会提供)

日本腎臓学会は、紅麹サプリを巡る健康被害判明を受けて全国医療機関の学会加入医師を対象に緊急調査を実施。3月31日までに同サプリ摂取後の腎障害を確認した47人の分析結果をまとめ、4月1日に「中間報告」として公表した。46人は「紅麹コレステヘルプ」を、残る1人は「ナイシヘルプ+コレステロール」をそれぞれ摂取していた。

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    摂取者が最も多かった「紅麹コレステヘルプ」(消費者庁提供)

47人の患者の年代は30~70歳で、40~69歳が9割を占め、女性が66%と多かった。また、初診日は昨年11月で、約8割が今年1月以降の初診だった。初診時の主訴は倦怠(けんたい)感や食欲不振、尿の異常、腎機能障害などで、腹部に何らかの症状があったり、体重減少を訴えたりする例もあったという。

同学会によると、腎臓内の「糸球体」が血液中の老廃物や塩分をろ過する働きをする。細い毛細血管が毛糸の球のように丸まってできているのでこの名が付いた。一つの糸球体は0.1~0.2ミリ大だが、1つの腎臓に約100万個の糸球体がある。糸球体でろ過された尿(原尿)の99%は再吸収される。この再吸収する働きをするのが尿細管だ。

同学会の調査結果によると腎生検をしたのは34人で、尿細管間質性腎炎や尿細管壊死(えし)、急性尿細管障害などが確認された。糸球体に病変があった患者も1人いたという。尿細管は薬剤の影響を受けやすいことで知られる。診察後の措置は、4分の3は問題のサプリの摂取の中止だけで、4分の1はステロイド治療が行われた。透析が必要だったのは2人。

同学会が重視したのは、尿細管の機能異常により引き起こされるファンコニー症候群が疑われる所見があった点。低カリウム血症、低リン血症、低尿酸血症、代謝性アシドーシスなど、同症候群に特有の所見が認められたという。この症候群は腎臓内の尿細管がダメージを受けて機能低下を起こす。

その結果、カリウムやナトリウム、ブドウ糖など、体に必要で重要な働きをする成分を再吸収できなくなり、尿として排出されてしまう。尿細管は薬剤の排せつの際も機能するために薬剤が集積し障害が起こりやすいとされる。

ファンコニー症候群になると倦怠感や脱水症状などが起こるほか、筋力低下や骨軟化症を起こす場合もある。先天性もあるが、後天性の場合は薬剤投与が原因の一つで、薬の服用中止により改善するケースも多いとされる。サプリ摂取によりこの所見が疑われたのは初めてとみられる。

厚生労働省は4月9日に記者会見し、小林製薬の問題のサプリ摂取との関連が疑われる死亡例として同社から報告があった5人のうち3人に既往歴があったことを明らかにした。既往歴の内容は▽前立腺がん▽悪性リンパ腫▽高血圧・高脂血症・リウマチ――だった。5人の性別は女性3人、男性2人。年代は70代3人、90代1人、不明1人という。

この日の記者会見には日本腎臓学会の南学理事長らも同席。同理事長によると、調査対象患者は中間報告公表時の47人から95人に増加し、このうち約4分の3はサプリ摂取をやめるだけで腎機能低下の症状が改善したという。同理事長らは、問題のサプリ摂取を速やかにやめることが重要で、体の不調を感じたら病院で検査することを勧めている。同学会は4月末まで調査を続け、最終報告をまとめる予定だ。

腎疾患などの健康被害の詳しい原因については、小林製薬のほか、厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所が調査中だが、早期の情報開示があれば被害を減らせた可能性が指摘されている。小林製薬によると、同社に被害の連絡が最初にあったのは1月15日で、2月6日には複数の健康被害が社長に報告されたが、公表は3月22日だった。武見敬三厚労相ら政府関係者も報告の遅れを問題視している。

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    健康被害が拡大している小林製薬の紅麹サプリ問題について記者会見する武見敬三厚労相(3月29日)(厚生労働省広報室提供)

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