Micron Technologyは、大量のデータとAIを活用した自動運転車のワークロード処理の加速を可能とするクアッドポートSSD「Micron 4150AT SSD」のサンプルを世界中の自動車メーカーへ開始したと発表した。
同製品は、最大4つのSoCと接続が可能で、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV/SDIV)で必要とされるストレージを一元化することを可能としたもの。シングルルートIOバーチャリゼーション(SR-IOV)、PCIe Gen 4インタフェース、耐久性のある車載向け設計などの機能を搭載することで、車載グレードでありながらデータセンターレベルの柔軟性と性能を自動車に提供するとしている。
その性能は、4KBのランダム読み取りと書き込みのIOPSはそれぞれ60万IOPSと10万IOPS以上としており、SSD内で複数SoCからのデータストリームを一度に、かつ効率的に管理することができるため、先進運転支援システム(ADAS)、車載インフォテインメント(IVI)、AIを活用したキャビンエクスペリエンスなど多様なシステムの処理に対応可能なソリューションとなると同社では説明している。
また、次世代自動車アーキテクチャの課題に対応するため、以下の特長を有しているともしている。
マルチポート機能
エンドマーケット向けとして初となる4ポート搭載SSDであり、最大4つのSoCに接続することで、高い柔軟性と信頼性を提供する。これにより自動車メーカーは1つのポートをADASシステムに、別のポートをIVIシステムに接続することで、共通の重要なマップデータセットにアクセスしながらそれぞれのシステムがプライベートデータを保存することができるようになり、ストレージコストの削減を実現する。また、両方のシステムが共有データに同時にアクセスできるため、パフォーマンスの向上も図ることができ、ボトルネックを解決できるほか、冗長的なデータコピーを保持する必要がなくなる。
仮想化
SR-IOV機能により、最大64台の仮想マシン(VM)の大量のマルチホストワークロードに対して高いパフォーマンスを実現するほか、独自の仮想化機能により、ストレージプールを共有しながら、各SoCと仮想マシンはローカル処理用の独立したストレージ領域を持つことで効率性を最大化できる。また、SR-IOV機能は、入出力(I/O)をVMからSSDに直接行うため、典型的な準仮想化とは異なり、I/Oがソフトウェアハイパーバイザーを経由してSSDにルーティングすることによる遅延が発生しないことが特徴で、ソフトウェアレイヤを迂回することで、SSDのランダム読み込みパフォーマンスを最大3倍向上させることができるようになる。
セキュリティの強化
独自の仮想化により、自動車メーカーに提供するセキュリティも向上する。SR-IOV仮想化に基づいて、各VMのデータがハードウェア内の他のデータから分離され、データやコードの漏洩を抑止するほか、不正アクセスされたVMから別のVMへのハッキングを防ぎ、重要なデータプライバシーとセキュリティを維持する。
カスタマイズ可能な耐久性モード
同製品はTLC NANDで設計されているが、SLCおよび耐久性に優れた(HE-SLC)データ耐久性グループをサポートする構成も可能で、SLCでは耐久性をTLCの20倍、HE-SLCでは50倍向上でき、独自のデータ要件に最適な対応が可能となるとする。例えば、HE-SLC耐久性グループは、連続的にセンサ、カメラ、LiDARから重要なデータを記録する必要がある連続的なブラックボックスデータ記録などの重い書き込み用途に使用でき、データが数分ごとにプログラムされ、消去される場合でも求められる十分な耐久性を提供できるため、DRAMなどのより高価な揮発性メモリを使用する必要性が生じないとしている。
自動車業界の厳格な要件に対応
同製品はASIL-Bに対応し、車両の過酷な環境に典型的な衝撃や振動に耐えるためのBGAパッケージで提供されるが、同社のほかの車載グレードポートフォリオと同様に、同製品は車両で見られる広範な温度範囲に耐えるように設計されている。
なお、同製品のサンプルはすでに各自動車メーカーに提供されているが、その最大容量は1.8TBで、次世代車両向けのAIアルゴリズム、大規模な言語モデル、高度なインフォテインメントおよびテレメトリデータを効率的に保存することを可能とするとしている。