マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の普及に向け、政府はスマートフォンに保険証機能を搭載するための検討を始めた。実現は2025年度以降になる見通しだが、厚生労働省の幹部は「スマホに保険証や診察券の機能が加われば、国民からは本当に便利になったと実感してもらえる。普段はあまりカード自体を持ち歩かない若者を中心にマイナ保険証の利用率が相当上がるのではないか」と期待する。
政府は12月2日に現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化することを決めた。ただ、ただ、情報のひも付けミスなどのトラブルを背景に、医療機関や薬局での利用率は4%台に低迷したままで、現行保険証の廃止までにどれだけ利用率を向上できるかが大きな課題となっている。
厚労省はマイナ保険証の利用促進策として、24年度診療報酬改定での新たな評価を創設するほか、医療機関・薬局を通じた患者らへの働き掛けも強化した。さらに利用率に関する目標設定を各保険者に求めているが、「マイナ保険証のメリットが理解しにくい」との声が根強く、どこまで効果を上げるかは未知数だ。
こうした中、政府が「普及に向けた起爆剤」ととらえるのがスマホへの機能搭載。
政府は3月に閣議決定された関連法の施行を見据え、マイナ保険証の機能もスマホに搭載できるよう仕様を見直す方針で、医療機関の診察券との統合も併せて検討する。
ただ、実現に向けては課題も多く、その一つがシステム対応だ。現在、医療機関で使用されているカード読み取り機器はスマホに対応できず、システム改修か新たな機器導入が必要となる。
担当の保険局幹部は「医療機関や薬局にしてみればまた改修や新しい機器購入が必要になるのか、となる」と指摘。窓口の事務負担が増える懸念もあるだけに、この幹部は「いかに医療機関、薬局の負担を少なくするかをしっかり考える」と話していた。